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大河への道のmaroのレビュー・感想・評価

大河への道(2022年製作の映画)
3.5
2022年日本公開映画で面白かった順位:67/77
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆

ちょっとトリッキーな映画である(笑)
史実なので言ってしまうと、この映画は伊能忠敬本人の話ではなく、彼の死後、地図を完成させた弟子たちの話なのだ。
伊能忠敬自身は歴史上の人物として有名な方なので、そのくだりを知っている人は多いかもしれないけど。

ストーリーは現代パートと江戸パートに分かれ、途中クロスしながら進んでいく。
まあ、『タイタニック』(1997)みたいな進行かな。
で、前者はコメディ寄り、後者はヒューマンドラマ寄りと毛色が異なるので、メリハリがあってよかった。

よかったんだけど、江戸パートが途中までちょっと退屈。
というのも、伊能忠敬はすでに亡くなっている上に、もう測量自体もほぼ終わってるんだよね。
だから、伊能忠敬が全国を歩き回る上での人間模様や苦労話とかってのはなく。
弟子たちが黙々と地図の清書に取り掛かっているのがメインなので、けっこう淡々としてるんだ。
だから、当時の雰囲気はわかるものの、映画として目を引く内容かというと、個人的に正直そうは思わなかったかなあ。

ただ、改めて伊能忠敬という人物のすごさがわかる。
もともと商人なんだよ。
で、51歳のときに2まわりも年下の人物に弟子入りして天文学を学んだ。
そして、56歳から観測を始めて、72歳まで続けたんだよ。
当時の72歳って、今で言ったら80歳とか90歳ぐらいじゃないか。
本土だけじゃなくて、周辺の島までひたすら歩いて。
そうして出来上がった地図がさ、最新のドローンで撮った日本の地図とほぼいっしょなの。
それを200年以上も前にアナログなやり方で作っちゃうんだから。
厳格な性格で、根気強く、几帳面だったそうだけど、そうじゃなきゃこんなことできないよね。
もちろん彼の功績は学校で習って知ってはいたけど、教科書じゃなくて、こういう物語の中で観るとまたそのすごさが一層際立つ。

で、その伊能忠敬に触発されたようなラストの池本(中井貴一)の姿勢も好感が持てた。
人はいくつになってもやる気さえあればできるんだってね。

あと、脚本家の加藤先生(橋爪功)が言った、「この地図は名もなき弟子たちの集大成。俺が(脚本を)書かなきゃこいつらの存在は知られないままだ」みたいなセリフも印象的だったな。
誰かが語り継がなきゃ、歴史は後世に残らないから。

そんなわけで、江戸パートがちょっと地味ではあるけど、内容としては日本人として知っておいた方がいいことなので、歴史の勉強として有意義だった。
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