かんげ

RRRのかんげのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
3.9
【血湧き肉躍る。いや、比喩ではなく…】

英国による植民地支配下のインド。英総督にさらわれた部族の娘を助け出すために、身の上を隠してデリーに潜伏するビーム。その動きを察知し、彼を捜し出そうとする警察官のラーマは、ある大義のために虐げられながらも従順に職務にあたって出世をめざしている。類まれなる能力を持った2人が出会い、互いに素性を知らないまま唯一無二の親友になっていくが…という物語。

上映時間は、まるまる3時間です。確実に長いです。でも、退屈はしません。むしろ、ぎゅうぎゅうに詰め込んだうえでの3時間です。インドでは慣習として途中休憩が挟まれるのですが、日本では休憩なしでの上映です。しかも、一般的な映画であれば一番のクライマックス級のシーンがあって、そこでバーンと「休憩(←この見せ方も面白いので、ここでは敢えて日本語で書いています)」と入るので、「えー! これで折り返し???」となってしまいます。

まず、徹底的にイギリスが悪者です。ただし、「イギリス人=悪者」ではなく、十分な理由があるイギリス人が悪者とされています。ジェニーのような良きイギリス人もいたり、パーティでは、2人のダンスにのせられて踊り出すイギリス人もいます。絶妙にバランスがとれています(まあ、多数巻き込まれてはいるでしょうが)。

基本的には、すべて勢いで押し切っているような映画ですが、「そう来たか!」というシーンも、巧妙に入っています。お気に入りは、ビームが左手でご飯を食べるところを咎められて、ラーマが「ハッ」とするところ。「インドでは左手は不浄とされていて、食事は右手で」というのは、日本人にも知れ渡っている風習です。最初は、インドの中でも地域によって風習の違いがあってビーム(アクタル)の正体がバレたのか?とも思いましたが、あとで、その理由が分かります。これはグッとくるところです。

バーフバリを観た時に、「過剰だが大味ではない」という感想を書きましたが、本作にもそのまま当てはまります。

2人が最初に出会うシーンも熱いですねぇ。初めて顔をあわせるのに、遠く離れた場所でアイコンタクトですべてを理解して、連携して子どもを助ける。「ありえない」ですが、そこまで理解し合えてしまう奇跡の2人の出会いとしてはアリという、力ずくの説得力です。また、「子どもを助ける」は、彼らがハリウッド映画的な「スーパーヒーロー」同等の存在であることを印象付けます。

驚くのがダンス。特に、肉々しい2人がシンクロして踊る「ナートゥ、ナートゥ」は、超高速ダンスを、キレッキレに息ぴったりで踊ります。コロナ禍でなければ、「振りコピ上映会」とかやったら面白そう。たぶん、ついていけない人が続出すると思いますが。

「インド映画といえば歌って踊って…」は、もう古いイメージですが、それは歌い踊ることをやめたわけではなく、歌い踊るけれども、物語の中での扱い方、レベルが変化しているということですね。本作でも、より熱く踊り、高らかに歌っています。

アクションについても、いい意味で「そんなバカな」というアクションがテンコ盛りですが、「そんなバカな」を成立させる前振りとして、そのアクションのトレーニングになっているようなシーンが入っていたりするので、侮れません。これも力ずくの説得力ですね。もちろん「そんなバカな」であることには変わりません。ビームとラーマのコンビネーション技は、小学生男子が観たら、掃除の時間に真似して先生に怒られるレベルのバカバカしさがありました(褒めてます)。

ポスターにも出ていますが、ビーム=水、ラーマ=炎は、イメージだけでなく、ビームが放水ホースを武器に使ったり、水に潜るシーンが多かったり、ラーマが火矢を使ったり、実際に戦う武器や戦う場の環境も、水と炎で分けられています。これも、面白いですね。

こんな武闘派もいれば、ガンジーのような非暴力・不服従もいたわけですから、実際は、悪の帝国イギリスvs独立解放インドという単純な図式でもなかったのでしょうね。そもそも使う言葉も違うくらい、いろいろな人がいるのですから。

もの凄いエネルギーを持った作品ですが、気になるところもありました。

タイトル「RRR」の、Rの1つは「Revolt(反乱)」だそうですね。もちろん、英国の植民地支配からの解放は大きなテーマです。ただ、革命とは民衆のものであって、2人のスーパーマンがやることではないと思うのです。もちろん「実在した偉大な革命の英雄が、もし同じ時代に出会っていたら」というのが、この作品の基点であることは理解しています。ビームに心を動かされた民衆のその先が見えるところまでフォローしてほしかったとも思うのです。

また、神のイメージを重ねるぐらいならいいのですが、ほとんど神になってしまっているのもどうだろうかと思います。神になってしまったら何でもありなので、「ありえないアクション」ではなくなってしまいます。バーフバリが神話の世界の物語だったので、せっかく実在の人物をモデルにしているのだから、「人の物語」であってほしかったと思うのでした。

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