かんげ

グランツーリスモのかんげのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
3.9
【レースも、人生も、自分だけのラインを追っていく】

Filmarksさんの試写会で当選。グランドシネマサンシャイン池袋のIMAXレーザーGTでの上映です(GT!)。

グランツーリスモの実写映画化と聞いた時には「え? レースゲームを映画化ってどういうこと? キャラクターがいるわけでも、ストーリーがあるわけではないよね…」「ゲームのグラフィックは、もはや映画を超えるぐらいにリアルなのに、実写映画にする必要ある?」と思っていましたが、「ゲームプレイヤーを実際のレーサーに育成する実話ベースの物語」と聞いて、俄然興味が湧いてきました。

そして、監督は「第9地区」のニール・ブロムカンプ監督。ディストピア的なちょっとダークなSFを撮る監督というイメージなので意外な人選ですが、本人がクルマ好きなんですね。「事故って入院中に、レーサーに特化した人体改造される」とか、そういう話ではないので、安心してください。

予告映像を見て、だいたいのストーリーは想像していました。候補生の中での切磋琢磨→不安と努力と小さな成功の積み上げ→調子が乗ってきたところで大きく挫折→周囲の助力と本人の意志で復活→大きな成功!といったところでしょうか。確かに、大筋では、そんなところではありますが、もっと熱く、濃く、いろんな要素が盛り込まれていました。

基本的には、「ロッキー」「あしたのジョー」のように、周りから認められず、環境に恵まれなかった者がチャンスをつかみ、努力と根性でライバルに打ち勝ち、成り上がる、ある意味スポ根ものです。

そこに、父子関係、師弟関係、仲間との切磋琢磨、悪役からの横やり、恋愛も少々…といった具合にてんこ盛り。挫折もつきものですが、その挫折が予想を超える精神的なダメージを受けるタイプのもので、それが大きいからこそ、その後の成功へのバネが大きくなります。ただし、この挫折は、実際とは時間軸が異なるそうで、ドラマのためにその組み換えをすることはアリなのか、ちょっと考えるところではありました。

悪役となるのは、金ピカのランボルギーニに乗るお金持ちドライバー。悪役が、気持ちいいぐらい徹頭徹尾、悪役というのも珍しいですね。さすがに、あれは実在のチーム、ドライバーではないですよね。 

劇中に出てきた言葉では、「自分のライン」が印象的でした。ラインとは、サーキットのコースの中で、理想的な走行ラインのことです。ドライバーが頭の中で描くものですが、そのラインを画面上に表現するというゲームっぽい演出もありました。みんなは同じラインを進むけど、ヤンは何度もグランツーリスモをプレイする中で見出してきた、自分だけのラインを行くというエピソードです。カート出身などではなく、ゲームからレーサーへという自分だけのラインを進んだ、ヤンのキャリアそのものでもありますね。

プレステ、日産ということで、日本のシーンもあります。日本の俳優さんも出ています。ハリウッド映画にありがちな「おかしな日本の風景」ではなく、ちゃんと渋谷スクランブル交差点、ちゃんと新宿思い出横丁というところも、好感が持てます。

今回、IMAXでの試写でしたが、この映画は4DXなどで見たら、アトラクション的にも面白そうです。GTアカデミーで実車に苦戦した候補生みたいにならないといいのですが。
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