かんげ

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのかんげのレビュー・感想・評価

3.5
Filmarksさんのオンライン試写会で視聴。

A24のホラーって、ホラーではあるけれども同時に別のジャンルでもあるというか、「怖い」以外の何かの要素が強かったりしますよね。

本作は、予告を見る限りでは、若者が都市伝説的な憑依ゲームにハマって、悲惨な目に遭っていくという、ある意味、王道といえば王道のホラーのようにも見えました。一方で、どのような変化球で来るのかという期待もあります。

その点では、冒頭こそ、衝撃的な展開でスタートしますが、その後は、「おや? 想像していた感じではないな…」と、やはり困惑と期待でスタートします。

母を亡くしたショックから立ち直れていないミアが、友人のジェイドとその弟ライリーと一緒に参加したホームパーティー。そこでは、怪しい手の人形と握手し、霊を降ろして憑依させる「90秒憑依チャレンジ」が行われていた。ライリーがチャレンジすると、そこに現れたのはミアの母の霊。そこから、どんどん事態は悪い方に向かっていく…という物語。

よくあるホラーならば、調子のいい奴らから痛い目に遭っていくのですが、本作では、いちばんしんどい環境にあるミアが、ドツボにハマっていってしまいます。これが、痛々しく、何とかならないものかと思いながら観ていくことになります。

この90秒憑依チャレンジは、霊を降ろし、自分に憑依させるのですが、それがトリップというか、快感をともなっているところが、興味深いところ。霊に対する怖さよりも、快感の方が勝ってしまっています。90秒以内に戻ればOKというハードルの低さで若者が気軽にチャレンジしやすいところも、「脱法ドラッグ」のような印象を受けます。

さらに、「呪物と手をつなぐ」という行為も象徴的です。握手は人と人との関係性を表しているのだと思います。母を亡くし、そのことと向き合えないミアは、父親との関係もよくありません。ジェイドの家族には身内のように思ってもらえていますが、ミアは彼女たちの思いを正しく受け取っているようには見えません。ドラッグのようなものは、そんな困難に漬け込むように、優しく「手を差し伸べてくる」ということなのかもしれません。

結局、「怖い」ということよりも、そんなことを考えてしまいました。
でも、「怖くない」ということではありませんよ。
かんげ

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