かんげ

パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女のかんげのレビュー・感想・評価

3.7
【ベイビー・ドライバーであり、ベイビー・ブローカーでもあり】

filmarksさんのオンライン試写で視聴。

廃車処理業のペッカン産業は、裏稼業として金さえ積めば何でも運ぶ「特送」を営んでいた。ドライバーのウナが受けた依頼は、元野球選手の賭博ブローカーとその息子を港に送ること。しかし、約束の場所に現れたのは息子だけ。悪徳警官にも狙われることになり、ウナは息子と貸金庫の鍵を送り届けることができるか…という物語。

アンダーグラウンドの運び屋・逃がし屋の映画はたくさんあると思いますが、ドライバーが女性というのは珍しいですね。

まず冒頭からカーチェイスに驚かされます。どっかーーーん、ばっしゃーーーんと大規模に衝突したり、炎上したりではない形で、カーアクションのアイデアの豊富さに引き込まれます。

このまま、「ベイビー・ドライバー」のように天才的ドライバーが、裏社会をひっかき回していくのかと思っていましたが、後半は格闘アクションが占める割合が大きくなってしまいました。まあ、裏稼業ですから、ドライビングテクニックだけではなく、腕っぷしも必要ということでしょうか。そこそこ死線をかいくぐってきているのでしょう。

ウナは愛猫以外に家族もなく、とてもクールな性格ですが、1人になってしまったスウォンを見捨てることができないのは、自分の境遇とも重ね合わせているからですね。影のある表情が印象的です。そういうウェットな部分もしっかりとあるのが、いいバランスです。裏稼業、ドライブ、孤児といったキーワードは「ベイビー・ブローカー」を思わせます。徐々に心を通わせていくところも。また、ウナとスウォンの関係性は男女逆転「レオン」のようでもありました。

格闘アクションの方も、どうしても腕力では不利になるので、創意工夫が満載です。DIYアクションは「イコライザー」のようです。

ペッカン産業の社長も、金にはうるさいけど、いいオヤジだし、メカニックのアシフも腕っこきでいい奴。こういう裏の経済を訳アリの人々が支えているというところが、妙にリアルです。

ただ、絡んでくるキャラクターが多いので、最初は、人間関係が全然把握できずに、ちょっと混乱してしまいました。誰が何のために何をしているの?と。家庭のPCで見ているため、集中度が低いということもあるかもしれません。

そして、邦題の「パーフェクト・ドライバー」。「ドライバー」が、作中で、印象的なアイテムの1つになっているので、ダブルミーニングもあるのでしょう。原題「특송」は、「特送」「Special Delivery」といった意味らしいので、送り届けることに比重があります。邦題のニュアンスだと、カーアクションのイメージが強いですが、実際には肉弾戦もかなりありますので、ちょっとミスディレクションをしているような気もします。でも、「運び屋」「トランスポーター」では別の映画になってしまいますね。これは難しい。少なくとも、サブタイトルは不要かな。
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