かんげ

もっと超越した所へ。のかんげのレビュー・感想・評価

もっと超越した所へ。(2022年製作の映画)
3.7
【男がダメ、女もダメ。同じダメなら踊らにゃ…】

束縛系ヒモ配信者怜人と恋愛ハードル低め衣装デザイナーの真知子、ノリだけ未熟フリーターの泰造とずぼらギャルの美和、あざとかわいい系ゲイお坊ちゃんのトミーと丁寧な暮らし系バラエティタレントの鈴、プライドだけは高い売れない俳優慎太郎と子持ちシングル風俗嬢の七瀬、4組のカップルの恋愛模様。4人の女性の共通点は、なぜかダメ男を引き寄せてしまうところで…という物語。

冒頭、これは「お米映画なのか?」と思ってしまうぐらいの、お米描写の連続。でも、これによって、4人の女性の性格や暮らしぶりが、それぞれよく分かるという仕掛け。いいですね。

この4組のカップルが、どこかで鉢合わせたりして、交わることになるのかなと思いながら見ていると、ある人物が元カレの話を始めたところで「おやっ、そういうことか」と気づきます。後々、「あぁ、あれはそういうことか」と、答え合わせができる感じもいいですね。

4人の男性のうち、怜人と慎太郎は、最初から、言葉の端々で「こいつ、ダメじゃん」感が全開。お客様という関係の七瀬は仕方がないとして、真知子については「どうして、こいつと付き合ってしまうんだよ」と思っちゃいます。

そこから2020年3月14日ホワイトデー、コロナが広がり始めるあたりで、物語が動き始めます。原作は2015年の舞台ですので、コロナは関係ありません。わざわざ舞台設定を2020年にしてコロナを絡ませているわけです。実際に、ステイホーム期間に時間を共有することが増えて「コロナ離婚」なんて言葉が生まれたりしていたわけで、カップルがお互いのことを考える時間にはなっていたのでしょうね。また、情報を得ることに積極的な人とそうでない人、感染予防に積極的な人と無頓着な人、そういう考え方の違いも明らかになります。

ここから、ある意味、修羅場に向かっていくわけですが、微笑ましく見えていた泰造もトミーも、「あぁ、学んでないなぁ」という、残念なダメっぷりが露わになってしまいます。4人の男性すべてが、最後の最後のセリフまで、まあ身勝手です。相手のことなど欠片も考えられていません。一切共感できません。

でも、彼女の側にも、ダメ男を引き寄せてしまう原因はあるとは思うんですよね。物語の中でも、自分にも落ち度があるということを振り返っていますが、それ以外にも、気になることはありました。

例えば、真知子は、怜人と再会してすぐに自分の部屋に上げてしまいます。迂闊ですよね。鈴は、ゲイ男性と共同生活するのであれば、恋愛感情を持たない相手であることが大前提で、そもそも初手を間違えています。そんなことを期待していたのか? 美和と泰造はお互い未熟なので、そんなものかとも思いますが、少なくとも避妊しない相手は拒否しましょう。七瀬は慎太郎を単に客として見ていたのか、恋愛感情があったのか、よく分かりませんでした。

男どもはダメ。でも、男がダメだからといって、それで女がダメじゃないということにはなりません。かつては糾弾されてこなかった有害な男性性のようなものが否定される時代になっていますが、同じように、女性にだってダメなところはあるのです。でも、ダメなところも含めて、お互い惹かれあってしまうのだから仕方がありません。

修羅場を観ながら、自分の中のダメ男要素がえぐられるような思いで、「本当にいろいろ申し訳ない」という気持ちでいっぱいだったのですが、そこで終わらないのがこの映画。

その先が「超越」ということになるのですが、まったく想定外の方向に超越していきます。これは賛否が分かれるところでしょう。その前で終わっていたら、「そっち系の映画」で終わっていたところですから、必要な展開ではあります。必ずしも、ハッピーエンディングではないし、その選択が正しかったかどうかも分からない。いや、そもそも正解なんてあるのかよ…というエンディングでした。

ある意味、映画から舞台への超越でもありますよね。セリフ回しも舞台を見ているような。ただ、舞台で生で見た方が解放感というか、カタルシスはより大きいのでしょうね。

https://kange.theblog.me/posts/38400050
かんげ

かんげ