Ren

バブルのRenのレビュー・感想・評価

バブル(2022年製作の映画)
1.5
褒めるべきポイントを探しながら観ようとはしたけど、努力の甲斐虚しく酷評せざるを得ない出来だった。あまりにお粗末。何の何番煎じかすらボヤけている、見事に何も無い映画。行間や余白でない「無」。

この人たちずっと何してんの?と思い続け、その疑問が一つも解決されないまま終わっていった。物語が向かうゴールが無く、事件らしきことが起こってやっとキャラクター達がその通り動かされる、それの繰り返し。100分でも長い。

大ベタなボーイミーツガール、映像表現は新海誠、そしてディストピアな東京の描写は流石に『天気の子』過ぎるし。極め付けは『人魚姫』そのままなストーリー展開。『竜とそばかすの姫』の『美女と野獣』引用でも感じたけど、古典作品を再構築もせず、舞台を変えただけのトレースに留まらせるのどうなの?エンディングは改変してはいたけど....。

大切な仲間が誘拐されたり東京が崩壊しかけていたり、達成するべき目標が大きいのに、その過程のパルクールアクションに登場人物たち自身が興奮しているからその悲劇がどの程度のものなのかが分からない。製作チームが今作を「作画」と「アクション」に全振りした弊害が物語に出ていると言える。

クオリティもそうだけど、この作品を世に送り出そうと決定した製作陣がいることが疑問。映像美が売りなら、5分間のMVに留めておくべきだった。「ストーリーに期待はせず、映像美を楽しむ映画」という擁護はあまりに苦しすぎる。
映像を推しているのに、状況説明はベラベラ台詞で行うのも最悪。スタッフをアニメファンに知名度のある布陣で固めて本筋はテキトーに済ませる。観客の知性をナメて、かつ観客の知性がナメられるほど落ちた成れの果て、「好きなスタッフ・キャストが関わっているからとりあえず絶賛」の消費スタイルが生んだ負の遺産。製作陣は誰も雑誌とかラジオとかYouTubeとかで、過去の駄作の映画評などを読んだり聞いたことがないのかな?

その他、
○ 義足のキャラクターが居たけど、誰もいなくなった東京にたまたま手術ができる医者が居たの?
○ 仮にも先進国の首都が崩壊したら日本自体が死ぬと思うのだけど、そういう描写が一切無し。徹底して泡の中の世界だけを描くならいいけどそうはなってなかったので、詰まるところ設定が甘いのだと思う。その割に世界の様々な土地のシーンが都合良く抜粋され挿入される。
○ 魅力的キャラクターが皆無。全員、シナリオを推進させるための駒。
○ 歌が心に響くことが重要なきっかけ。「ウタ」と「ヒビキ」。
○ スタッフ・キャストの座組みの前情報、映像の評価だけが膨れ上がり、内容が何も無い文字通り「泡」のような作品になってしまったのが最大の皮肉。
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