このレビューはネタバレを含みます
ハイライト部分ではしっかりと泣いたのにこの評価になったのは、本作のテーマが非常に重く、「映画」というより「教材」としての側面が強すぎたことが理由かと思う。
日本各地の廃墟に表れる「後ろ戸」が開くことにより起きる大災害を未然に防ぐ「閉じ師」の草太と鈴芽が出会い、全国を渡り歩くロードムービーの根底には「東日本大震災で壊れてしまった人々の生活と心の再生」がテーマとして描かれている。三本脚の椅子は震災で欠けてしまった鈴芽の心の象徴でもある。
本作は「映画」という形で「あの震災を人々がいつまでも忘れない様に」と伝え るメッセージ性が強く、「娯楽として面白いかどうか？」を安易に判断してはいけない、「道徳の教科書」の様な窮屈な印象を受けた。終盤の鈴芽同士の会話でも、今の鈴芽が先生みたいに諭す口調がとても違和感があったし、あのシーンはもっとセリフが少ない方が個人的にはよかった。あと、サダイジンが環さんに乗り移る必要もなかったと思う。あの2人だけで今後ゆっくり解決できた葛藤だったのに。
そんなデリケートなテーマを支えるドラマパート自体はよく言えばテンポはよいけど、登場人物1人1人の行動や動機には謎や飛躍が多く、今ひとつ没入出来なかったのもちょっと消化不良。
新海監督作品の登場人物て無条件な善人が多いよね、それが好きなんだけど。そして後半から登場でも、際立ちまくってしまう芹澤役の神木隆之介の存在感の凄さ。
