ksr1702

すずめの戸締まりのksr1702のネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

本当に滅茶苦茶良いものを見た時、良い部分が多すぎてどこから話すべきかわからなくなる現象が起きているのでこれは本当に滅茶苦茶良いものです。
ただやっぱり映画の締めくくりとして、最後に常世の子供の自分に言った言葉の「光の中で大人になっていくんだ~ これから素敵な人に沢山出会うから今が暗闇でも~」が一番伝えたかったテーマで、映画全体がその言葉中心に組み立てられている。まさにすずめが旅をしていろんな人に出会って、今までのストーリーをそのままなぞる言葉。これを観客各々がどれだけ素直に受け止められるかによって、映画に対する感じ方は変わるんだろうなと思う。「やまない雨はない」系の言葉とジャンル分けして処理してしまうとやっぱり陳腐に聞こえるかもしれないけど、それをストレートに届けるために映画の尺ほとんどを使って言葉の重みを与えて最後に一発食らわせる試みには成功しているんじゃないかなと思う。少なくとも自分はしっかり一発喰らったからもう完璧と言えるくらいの完成度に見える。逆にあそこを、ド派手アクションシーンが終わった後の余韻でボーッと過ごしてしまうといけない。
すずめが被災者だってこと(そもそもあの世界に震災があったこと)が真っ黒の日記帳で強いインパクトを持って示された後で、今までのすずめの言動にそこかしこにあった不自然さとか「なんかこの子ちょっとおかしいな」感が一気に回収される。それを再確認するために二回見た。
芹沢と眺めていた海の景色(『これが…綺麗…?』のとこ)。一回目見終わった後に「悲しみを乗り越えるのって大変だよねわかるよ」とすずめ側の気持ちをわかった風に構えつつ、あの景色をなんとなく綺麗で良いなと思っていた自分にとっては、あのシーンの意味が理解できた時にビンタをくらわされた後のような気分になる。今までめぐって来た廃墟群が、すずめの目にはどう映っていたのか考えるとめちゃくちゃ重い。
良いシーンを挙げ始めたらキリがないアニメ、無駄なシーンがないアニメは本当に良い

またこれを見終わった後に、まだ見ていなかった天気の子を見て度肝を抜かれた。
世界を振り回す個人の素晴らしさ、何を捨てても今を追い求める情熱の素晴らしさを説く天気の子の一方で、世界の理不尽さに振り回されてどうしようもなく損なわれていく人間が、それでも強く生きていく姿の美しさを説く。
テーマが真逆。同じモチーフを逆から裏から見たものを描いているじゃん。それで両方の素晴らしさを余すところなく表現してるのやばい天才じゃんこれ。って感じでマジで次回作楽しみ
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