このレビューはネタバレを含みます
[あの日の前と後と]
新海誠監督の最新作品ですが、前作の「天気の子」が素晴らしい作品でしたので、今作への期待も必然的に高まります。
相変わらず、ストーリー展開のテンポが良く、話がサクサク進行していくので、設定や説明が置き去りになるのは否めませんが、しっかりと後から回収されるのは流石です。
今作は地鎮?のようなものがテーマになっています。
これもまた、誰かの犠牲の上に、私たちの平穏は保たれているという、人柱のような発想です。
前作の「天気の子」でもそうでしたが、新海誠監督の作品には、日本的な風習の闇の部分にスポットを当てている面が多く見られます。
このような点は、宮崎駿監督の一部の作品にも共通しているようにおもわれますが、個人的には、新海誠監督の方が、より直接的な怖さのようなものを表現しているように思われます。
今作も自然現象を霊的なものと結びつけていた、連綿と続く日本の風習と、夏の薄暮のような、摩訶不思議な不安定感を感じることができました。
ところで、作中には、私も体験した、ある大災害が重要な意味を持って登場します。
主人公のすずめは、その体験を最終的には乗り越えて克服することができました。
しかし、私自身を振り返ると、私は、いまだにその前の日までの世界に囚われているように思われました。
私の価値観を根底から覆し、私の人生のターニングポイントとなった出来事ですが、私自身は前に進めていないのかもしれません。
今作も、今までの作品と同様に、光と水の表現、そして、作画におけるアングルのようなものは、相変わらず素晴らしいものでした。
いつも、日本のアニメーションの技術には感嘆を禁じ得ません。