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Betty Boop, M.D.(原題)のTnTのレビュー・感想・評価

Betty Boop, M.D.(原題)(1932年製作の映画)
4.4
 狂いすぎ注意。ベティ・ブープシリーズはやっぱ狂おしいほど好き。ノリと笑いと変化自在な体と歌と、キュートなキャラクター。ディズニーはクラシカルアニメ感があるけど、フライシャーの手がけたアニメは俗っぽさと如実な狂気があって良いんですよー。

 オープニングからお洒落すぎ。楽器とベティの掛け合いが可愛い。アニメキャラとは思えないほどベティは大女優の風格というか存在感があるんだよなー。アニメ界のマリリンだと思うほんと。それでいてフライシャーは往年のキャラたちをしっかり扱う。フライシャー作品で一番に生まれた道化師ココや犬のビンボー(元々ベティはビンボー主役の作品の中のヒロイン的立ち位置だったが、形勢逆転し自立した笑)もちゃんと登場するし見せ場もあって良い。カエルのキャラが出てくるけど、同時期にアニメ業界で威勢を張ったアブ・アイワークスの「Flip The Frog」への当てつけかと思われる(しばしフライシャー作品にはライバル作家のキャラがまんまパクられる、ミッキーが出ることも)。

 うっすらと死。骸骨や墓場が喋ったりするシーンが多く、そこらへんがフライシャー作品のビターな味になってると思う。歌われる音楽は白人のものだがスキャットが入ることでブルージーさを増してる(数分のアニメのために編曲してる手間よ)。アニミズムとしてしっかり死生観を持ってるように思う。この狂気の所以は、死と生が表裏一体な、メキシコっぽい死生観が要因なのではと思うのだ。ヴードゥーっぽさもあるし、アメリカという土地周縁の精神性が宿ってるように思えるのだ。その点でディズニーランドのようなオリエンタリズムだけに陥らない懐の深さを持っている気がする。

 ラストの赤ん坊が化け物顔になるオチ今までわけわかんねーと思ってたけど、調べたら「ジキル博士とハイド氏」のオマージュらしく、今作で売られる劇薬ジッポの副作用であり科学技術への警鐘となっているようだ。そういうとこちゃんとしてんの、おもろい。
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