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ヴェニスの子供自動車競走のTnTのレビュー・感想・評価

ヴェニスの子供自動車競走(1914年製作の映画)
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 誰の本か忘れたが、この映画でのチャップリンは監督ではないが、既にあの浮浪者的なルックスを確立しており、画面占有率を独占し、後に監督になるのも頷けると書いていたものがあったような(カメラとの葛藤が云々)。

 リュミエールがドキュメンタリーに見せかけて巧妙に喜劇を入れ込んだように、今作もレース会場に来たヤバいやつことチャップリンという、フェイクドキュメンタリーをやっている(言うてまだ1914年の代物だし劇映画的では全然ない)。レース自体の規模感からは、恐らく本物であり、そうなると撮影隊らは迷惑系YouTuberに近いノリなんじゃないか?と思えてくる。しかし、近年のショート動画全盛っぷりやファスト映画、そしてyoutuberには映画黎明期に見られたような衝動が見てとれる。皆がまた一から無知故に、映画史の道を歩み出している。もしかすると迷惑系youtuberもいつかは悲喜劇を描く監督へと変貌していくのでは?(と楽観視できないくらい現状は邪悪な奴らが多すぎるが…)。

 最初は映り込みだが、その後映り込みされるカメラもまた劇中映される。そうなると今見ているこのカメラの視線はなんなのか。演者らがカメラを無視してストーリーを紡ぎ出す、それがフィクションであり劇映画であり、その後の潮流への布石を今作に見た。
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