Rick

生きる LIVINGのRickのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.4
 日々のルーティンに埋没し、心を殺してしまってはいないか。生きながらも死んでいるようではないか。ただ時間を潰す方法を忘れてしまってはいないか。ただ生きるのではなく、よく生きているか。
 黒澤明の名作『生きる』をカズオ・イシグロが翻案、主演がビル・ナイと聞いて、どう調理するのか楽しみにしていたところではあった。実際のところ、話の筋自体もほとんどオリジナルと変わらなかった。ただ志村喬とビル・ナイの差は明白であった。志村喬の目が白黒画面の中でギラギラとしていたのが印象的であったのに対して、今作は驚くほどジェントルマンなのだ。哀しさと寂しさを湛えた小役人の最後の日々をしっとりとずっしりと描く。画面は非常にリッチで、「ゴンドラの唄」から変わった歌も素晴らしい。
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