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エンパイア・オブ・ライトのyukoのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
5.0
桜が満開だったときに観た映画だけど、まだいつでも気持ちがどくどくするくらい、私にとって大切な映画になりました。
観たときはいろんな涙が次々と出てきて大変でした。本当はいつまでもエンドロールをみていたいような気持ちだったけれど、やっぱり終わってしまう。映画館を出てからもエンドロールのピアノ曲が頭のなかで流れ続けました。
ヒラリーが薬をのむことをやめて、だんだんと彼女の毎日のなかに音楽が流れ出したときのことをいつまでも反芻していたいし、あの夜の、赤ワイン片手に声のボリューム大きめの彼女が、スティーブンも言っていたように彼女の魅力が一番画面に溢れていたよう(というかだだ漏れ状態)に感じました。狂気と正気でいうと、彼女はとてもそれに自覚的だったようにみえたし、あのままのヒラリーが毎日を暮らせるような場所があれば良かったのに、と思ってしまう。
あと、躊躇なく、自分がいま履いてるくつ下をじょきじょきと切って骨が折れた鳩の治療につかうスティーブンが、あの時代のイギリスでレゲエやスカに夢中だったことがとても自然なことに感じられて、本気で恋してしまうくらいの彼の魅力もすごかったです。
光ばっかり映ってるみたいにみえていた画面にも、知覚できないくらいの闇が実はたくさんはさまって出来ているフィルム映画、それを物語としてみせられて、帰り道はとても重たい足取りになりました。
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