まーしー

エンパイア・オブ・ライトのまーしーのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
3.0
1980年代初頭、イギリスの映画館「エンパイア劇場」を舞台に、従業員の中年女性と若き黒人の青年が紡ぐ人間ドラマ。

オリヴィア・コールマンが演じる主人公ヒラリーは、映画館で働きながらも、定期的な通院を余儀なくされるほど、精神的に不安定な女性。
ある日、黒人の青年スティーヴンが映画館で働き始め、やがて二人は恋に落ちる。
年齢差、人種を超えた二人の恋愛に、違和感を抱くかも知れない。が、恋愛に理屈はないのだろう。
未使用の部屋で逢瀬を重ねる二人の姿からは、高校生のような甘酸っぱさすら感じられる。

しかし、ヒラリーは精神的な弱さを持ち、黒人のスティーヴンも白人たちの目の敵にされる存在。
階級意識が強く、保守的な当時のイギリス社会の中では、二人はハンデを追うマイノリティ。
それ故、二人の関係は強固にもなるし、時には脆弱にもなる。
時代の波に翻弄される二人を淡々と描くストーリーは、やや単調に感じつつも、心に訴えかけてくるものがあった。

『アメリカン・ビューティー』や『007/スカフォール』、『1917 命をかけた伝令』など、様々なジャンルを撮ったサム・メンデス監督作品というだけあり、本作も色々な要素が盛り込まれている。
男女のロマンスを描いた恋愛映画であり、人種差別をテーマにした社会派ドラマでもある。また、精神疾患を抱える女性の成長を描いた人間ドラマとも言えるだろう。
そのような幾つもの顔を持つ内容が、本作の見どころの1つかも知れない。