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ノートルダム 炎の大聖堂のaiaiのレビュー・感想・評価

ノートルダム 炎の大聖堂(2022年製作の映画)
3.9
ドキュメンタリーな映画で、映画的なドキュメンタリー
~映画をみるならフランス映画さvol4~

先日、とある消防局のビル(6階ぐらいある)の非常階段を、消防服着た消防士さんが、登ったり降りたりするのを偶然見かけた。

自主トレなのか業務上のトレーニングなのかわからないが、一階に降りたら、今度はマスクして(防煙マスクのような顔全体を覆うもの)登り始める。

外はうだるような暑さ。

ほんと頭が下がる。
日頃から訓練している彼らに敬意を払うとともに、火の用心を肝に銘じたしだい。

さて、この映画、2019年に発生した世界遺産「ノートルダム大聖堂」の火災を描いている。

自分はノートルダム大聖堂の実物をみたことないが、昔ペーパークラフトにチャレンジしたことがあった。
あまりに精密過ぎて途中でギブアップしたのだが、そのフォルムの美しさには魅了された(精密過ぎるという言い訳してしまいましたが、日本の観光地とかで売ってるようなシンプルなものではなく、海外のペーパークラフトって、おしなべて精密なのです)

その大聖堂が実際に火災となり、あの特徴的な尖塔が炎に包まれ崩落する映像は衝撃的である。

火災映画といえば、古くはポール・ニューマン、スティーブ・マックイーンの「タワーリング・インフェルノ」、カート・ラッセル「バックドラフト」が有名であるが、あれらのような感動的な群像劇や、火災を取り巻くヒューマンを描いたドラマティックな演出は本作には無い。

そういった映画的な派手さはないものの、当時の生の火災映像を適宜織り込んでいるので、小手先の演出も吹き飛ぶインパクトがある。

さらに、

- パリの道が狭くて消防車が通れない

- 世界的文化財・美術品が多く保管されている大聖堂内の収蔵品を救い出すのに命がけ

- 屋根や尖塔には大量の「鉛」が使用されており、その鉛が炎で溶け滝のように流れ落ちる(後にあの地域の公害問題へ)

などなど、へぇ~とか、なるほど~って唸るような固有のリアルが満載。

一方で、実際に消火活動をおこなう消防士を中心として、指揮命令系統を一括する司令室であるとか、大聖堂を取り巻く周辺の不安げな大衆、大聖堂を管理監督する中の人たち、政府スジ(本物のマクロン大統領)、関係者・関係各所を同時で切り替える映像手法により、より立体的に火災の恐ろしさ、災害のリアルさを表現したのは映画的。

これ以上、当時の事実を積み上げると、なにやらゴールデンタイムの「世界の衝撃映像特番」みたいになりそうだし、かといって従来路線でドラマティックを誇張しすぎると、嘘っぽくなる。

本作はそのさじ加減が絶妙で、ドキュメンタリーと映画的な調和がうまくとれた、バランスのいい作品に仕上がっていた。

来年はパリオリンピック。
同時に大聖堂復興プロジェクトの最終年だそう。
あの美しい大聖堂の完全な復興を祈る。
aiai

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