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コンペティションのaiaiのレビュー・感想・評価

コンペティション(2021年製作の映画)
3.6
ひときわ静けさが匂い立つ大人のコメディー
劇中劇は終わっても、この映画は終わらない
~クセがすごいのvol2~

直前にみた映画がガチャガチャしていたので、本作の静けさが余計に際立った印象。映画をみる順番も大事ですね😅

以下、この映画をみるにあたって、事前にインプットしているといいかもの情報~

(劇中劇)
文字通り、劇の中で劇をやるという昔からあるスタイル。
劇中劇は大体において(自分が知る限りの大体において)登場人物らが現在置かれている境遇を暗示するような写し鏡であることが多い。
彼らがその劇を演じ作り上げる過程のなかで、ある時は自らを反省し、ある時は進むべき方向性のヒントをつかんだりする。

(エチュード)
簡単な状況設定と役柄をその場で役者に与え、後は役者に即興で芝居をやらせる。
これも昔ながらの演技の練習メソッド。
このエチュードの出来しだいで、その役者の力量がおおよそわかる。
「ガラスの仮面」という演劇スポ根漫画で、主人公の北島マヤがよくやらされていた。彼女は天才。理屈ではなく感性でその場を一瞬にして「北島劇場」にしてしまう。

(アルゼンチンvsスペイン)
今回、天才肌の映画監督を演じるのは、あのペネロペ。
大スター俳優を演じるのは、おなじみバンデラス。
ペネロペもバンデラスも、2人ともスペインの俳優。
いぶし銀的舞台俳優を演じるのは、オスカル・マルティネス。彼はアルゼンチンの俳優。
そして監督は2人ともアルゼンチン出身。
一見すると、アルゼンチンとスペインの二国間は地理的に離れているので、どういう結びつき?と疑問に思うかもしれないが、アルゼンチンは、かつてのスペインによる植民地支配の影響から公用語がスペイン語。
歴史的なつながり、同じスペイン語ということもあってか、映画以外でもアルゼンチンとスペインの文化交流は盛んだそう。

‐物語の導入が秀逸

とある成功した実業家が死ぬまでになにかを残したいという、自叙伝書いて自費出版する的なワガママから、映画を作ることになる。
作るといっても実業家はスポンサーとして金を出すだけで、餅は餅屋で映画作りはプロに任せる。
どうせ作るのなら、一流の役者、一流の映画監督を起用したい。
ということで、業界で名を馳せている映画監督と2人の実力俳優が集まることに。

最初、実業家が監督と初顔合わせした際、監督がこれから作ろうとする映画のあら筋を話すシーンがある。これが秀逸。
兄と弟の物語で、それから?それから?って肝心なところでカメラがす~っと引いて、2人の会話が聞こえなくなる。
うわぁ、この話の続き、どうなるんだろう?って、つかみはOK。

‐こだわった画作りが素敵

映画を作るため、美術館のようなモダニズム建築風の佇まいの場所で、3人が台本の読み合わせしたり、冒頭のエチュードをやったり準備する。

この一連のシークエンスにおいて、画面の構図に役者を配置する際の遠近であったり、背景であったり、監督の画作りに対する非常なこだわりが感じられた。
小道具の使い方も時に大げさで、結構笑える使い方が印象的。

劇中劇とエチュードという古いスキームが屋台骨の物語であるが、なにかこう新鮮に感じるのは、従来の映画作りにおける皮肉だけではない、監督の映画愛というか映画作りのプロセスにおけるオマージュが同居しているからなんだろうか。

—ザ・雑感—
とにかく、ペネロペの目力が凄いです。
真正面から見つめられると吸い込まれそうで身動き封じられる😵‍💫
それと日本だとさほど知名度がないほうかもしれないのですが、オスカル・マルティネス。
彼いい味出してるんですよね。
おれおれバンデラスとの一騎打ちが楽しかった。

全体的にコメディーではあるものの、最初のほうの伏線をラストのほうで回収したりと、サスペンス風味も適量あって、いったいどうなるんだろうって最後まで引っ張られました。
大人に観て欲しい作品です。
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