へたれ

TAR/ターのへたれのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.2
良かったとこ1 ケイト・ブランシェットの謎の存在感
演じているのは明らかにケイト・ブランシェットだけど、こういう指揮者が実在するかのような謎の存在感。インタビュー前の緊張した表情やその後の長いインタビュー、さらにリハーサルで指揮をしている時の誰かに憑依したレベルのなりきりぶり。
映画開始から1時間ぐらいは指揮者の日常が繰り返されるので、後半を見ないと退屈にも見えかねないけど、彼女の謎の存在感のおかげでドキュメンタリーを見ているような錯覚すらあって退屈しない。

良かったとこ2 音響設計
オープニングのインタビューは会場で録音したようなモノラル音。それがフルオーケストラのリハーサルになると大音響向きのリッチな音になるし、夜中に聞こえる物音は聴覚テスト並みに小さくしかも指向性がはっきりしていてサラウンド向き。
音響にかなりこだわって作られているのが良かった。

良かったとこ3 推測で組み立てられるストーリー
主人公のTARがこれまでにやってきたことを直接は見せず、すべてが断片的なシーンと推測で成り立っている。中盤ぐらいになって人間関係がはっきりしてくると、彼女がこれまでどんな人生を歩んできたかが見えてくる。
一見すると意味が分からなかったり鵜呑みにしてしまったりしたことが、あとになって化けの皮が剥がれてくるのは見てて気持ち良かった。
(彼女が何故NPRの番組で発音の練習をしているのかとか、何故バーンスタインの弟子だと言ってきたかなど)
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