へたれ

ファースト・カウのへたれのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.5
良かったとこ1 ケリー・ライカートらしい映画
ケリー・ライカートらしく、ゆったりとしたテンポと、それに反して過酷な現実が描かれるという対比が良かった。単に男たちの友情というだけでなく、アメリカでは生まれたばかりだった資本主義の原風景を背景にしてゴールドラッシュ以前のアメリカンドリームを描こうという姿勢や、「ミークス・カットオフ」に続いてアメリカ原住民との微妙な関係を描くとか、アメリカ社会の根っこを描こうというこの人の姿勢がブレていないのは相変わらず。

良かったとこ2 食文化へのアプローチ
一般的な西部劇よりも一昔前の時代を描くにあたって、当時の食文化に着目するのが面白かった。まだ穴が開く前のドーナツを食べてイギリス人が故郷を懐かしんだり、クラフティを作らせるということでもてなす相手がフランス人だと観客に分からせたりと、芸が細かかった。
そして何より、最初に食べるキノコからして美味しそうに見えるように作られているのが良かった。

ダメだったとこ 予定調和的なサスペンス演出
ラスト30分は一応サスペンスがあるはずだけど、牛乳泥棒が始まってからも映画のテンポはのんびりしたままで、サスペンスらしさをほとんど感じなかった。そういうテーマの映画でもないので、だったら中途半端に予定調和なサスペンス演出はない方がスッキリしていたと思う。
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