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TAR/ターのyonemakoのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.3
主人公のリディア・ターはベルリン・フィルの首席指揮者に上り詰めた女性。女性が権力の階段を昇り詰めるために、使える手は何でも使うことが描かれ、同時に「全能感」のある男性がやりがちなプレデター(捕食者)行為もどんどんしていく。だけど彼女が潰した若い女性指揮者が自死したことで、マーラーの交響曲全9作のうち、あと1作のライブ録音を終えればコンプリートというところで彼女の世界は「キャンセル」される。身内の裏切りで身を亡ぼすところが信長っぽくもある。

ケイト・ブランシェットの渾身の演技が高く評価されてますが、3人の共演者も見応えがあります。パートナー役のニーナ・ホスは「ホームランド」ドイツ編にも登場した実力ある女優。アシスタント役に「燃ゆる女の肖像」「パリ13区」のノエミ・メルラン。感情を秘めた役どころでしたが存在感があった。そして、主人公を利用する若い演奏家オルガにゾフィー・カウアー。この人は本物のチェリストのようです。

説明なく複数のロケーションが切り替わるので少しわかりづらいですが、ベルリンの街をすごく効果的に使ってると思いました。

あと、作品について、現役の女性指揮者から強い批判があったみたいだけど、もっと複雑な要素があり、ラストシーンも複数の解釈が可能で、読み解き甲斐のある複雑でち密な作品でした。
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