前作の『ファーザー』は認知症の父と娘の関係を描いた作品でしたが、こちらは心を病んだ息子と、それに対処できない両親の関係を描いています。
父親と母親が離婚していて、それぞれが成功したビジネスパーソンであることは立派なオフィスの描写から伝わってくる。そうした地位を手に入れるためにたゆまぬ努力してきた人たちなので、成功の軌道から脱落しかかっているように見える息子に対して、叱咤激励の嵐となる。息子はうつ病にみえるけど、弱った状態にある人のことがまるで分らないというのがこの物語で描かれる不幸。
病気なんだからきちんと治すのが先とは考えず、とにかくエリート軌道に一刻も早く戻すことで両親の頭の中はいっぱい。息子の本当の状態を知ろうとはしていない？メンタルヘルスの知識がない？両親の過度の期待が重圧となって、息子は次第に追い詰められていく。
私はこの映画から、弱っている人を追い込んではいけないというメッセージを受け取りました。
