Rick

モリコーネ 映画が恋した音楽家のRickのレビュー・感想・評価

4.4
 エンニオ・モリコーネ。この名前を知らずとも、彼の作った曲はどこかで必ず耳にしたことがあるはずだ。『ニュー・シネマ・パラダイス』か、『続・夕陽のガンマン』か、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』か、『アンタッチャブル』か。携わった作品は数百にも上るが、並べてみると音楽性が一貫していないようにも感じてしまう。どれも素晴らしい楽曲に違いはないが、素人の耳には同じ人の手によるものとは信じ難い。なぜこれほどまでに手数が多いのかずっと不思議でならなかった。このドキュメンタリーを見れば、そのような疑問は氷解するだろう。
 トランペッターを父に持ち、自らも生まれてずっと音楽に生きた人が、クラシカルな音楽、実験的な現代音楽、ポップミュージック、そして新興の映画音楽の狭間で揺らぐ姿がありありと描かれる。映画音楽に劣等感を抱き、長年やめると言い続けながらも、監督以上にその映画のことを理解し、そのシーンや人物に相応しい音楽を導き出す天才、マエストロ。頑固で純粋で、誠実な人柄が、重厚で深遠なメロディに表れているようである。
 映画音楽に関するドキュメンタリーで嬉々として喋るハンス・ジマーを見るたびにほっこりするようになってきた。個人的に一番好きなモリコーネの曲は、『海の上のピアニスト』の「1900’s theme」、聞くたびに「アメーリカ!」と叫びたくなる。
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