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モリコーネ 映画が恋した音楽家のJINのレビュー・感想・評価

4.4
映画音楽の巨匠のドキュメンタリーなら当然映画館で観るべきだろうということで。
エンニオ・モリコーネという名前を初めて意識したのはいつだったかももう覚えていない。
そもそも自分が本格的に映画を好きになっていったのは10代後半ぐらいからだったろうか。
それ以前から自分のルーツであるクラシックの流れで映画音楽もよく聴いていた。
その時はむしろわかりやすいジョン・ウィリアムズだったり、ハンス・ジマーだったり、伊福部昭だったり、SFやホラーのサントラなんかが中心で、エンニオ・モリコーネの名前もおそらくその中で耳にしたんだと思う。
ただ、彼の音楽をどっぷり聴くようなことは無かった。
勿論、彼が音楽を担当した映画をそれとは知らずにたくさん観てはいたんだけども。

この映画を観ると、彼がどんな思いで音楽人生を歩んできたのか、モリコーネ本人の言葉と、彼と仕事をした人達との言葉から、その変遷の歴史がとてもよくわかる。
そして、彼がどれだけの偉業を成し遂げて来たのかも。

先ず彼の言葉を通して驚いたのが、アカデミックなクラシックこそが芸術であり、映画音楽なんて商業的で俗っぽい地位の低い音楽だと見られていたことで、モリコーネ自身もそこにコンプレックスを抱いていたこと。
映画音楽に誇りを持てるようになるまでそんなにも時間を要したのかっていう。
しかしながら、彼のようにしっかりした音楽理論の礎を持った人間が、映画の中で様々な実験的な挑戦を重ねたことによって、映画音楽そのものの地位を底上げしたことは間違いなかった。

どうも彼の場合五線譜に向かうまでに既に頭の中でどんどんイメージが湧き上がってくるようで、そこまでの時間がかなり大事みたいだ。
立ったままただピアノを見るだけで弾かずに作曲したり。
閃きが凄い。
現代音楽的なアプローチもポップな解釈もその多彩なアレンジ能力に舌を巻く。
映画全体を把握する力も監督ら作り手以上の感覚の持ち主だという。
そりゃ誰もが尊敬するわけだ。
西部劇を担当したことで名を上げておきながら、作品自体は好きじゃないとハッキリ言ってるのも面白かった。
暴力描写は嫌いらしい。
そして彼がとても真面目な愛妻家だということもよく伝わってきたなあ。

エンニオ・モリコーネはおそらく後世ではもっと評価されることになるのではないだろうか。
音楽史に大きく名を残すだけのことをやってのけた人だと思う。

ただ巨匠の顔がスクリーンでドアップになる度に白い鼻毛を切ってあげたくなった(笑)
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