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ケイコ 目を澄ませてのtaikingのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.3
こんなにも引き算を突き詰めた作品で心打たれたのは初めてかもしれない。(逆に言えばこんなにも引き算な作品も珍しいとは思うのですが)

ただ、ケイコとその周りの人々の日常を映しているだけなのにここまでドラマチックさを感じるのは、岸井ゆきのが放つ圧倒的な演技力とフィルム撮影による映像、音楽がほとんど排除され環境音で構成された音の世界、これに尽きる。流石にに今作の岸井ゆきのにはこれが「演じる」ということか。。。と圧倒された。そしてシーン全てが切り取って保存したいほどの質感の良さを放つ映像。何といっても音楽の無さ。ひたすらに放たれるミット打ちの音や電車などの環境音。

物語としても愛おしさを強く感じました。耳が聞こえないことで生じるハンディキャップや困難さもサラッと描き、ケイコの孤独さを際立たせつつも周囲の人間の愛おしさたるや。いや〜ケイコと会長が鏡の前でシャドーするシーン本当に良すぎちゃったな。。

もちろん、多くを語らず映画的ドラマチックさを求めている作品では無いからこそ、エンタメとして楽しむ側面はあまり薄いですが、こういう作品を好きになれて良かった。
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