御影LIN

X エックスの御影LINのネタバレレビュー・内容・結末

X エックス(2022年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

R15+

うんんんんん。
先にこれだけ叫ばせて下さい。
……一番ビッチでアバズレなのはお前だろこのクソ婆婆!!!!!

…はぁはぁ。失礼しました。
いや、害悪なのは、母屋に住むお婆さんのみですよね。
それ以外の人たちは、思想はどうにせよ、善良なごくごく一般的な人々だったと思います。

悪魔のいけにえを見たばかりなので、やはりこれもホラーのセオリーを踏襲していると理解していて、何だかツウになった気持ちで最初は楽しめました。

・誰もこなさそうな古い離れの建物に男女6名で泊まる

しかし、このあとの
・聖女が生き残る
というセオリーは途中で崩されました。

そこからオチを読むことはできなくなり、終始どんな展開になるのかドキドキが続きました。

音で驚かせてくる演出が多いので、
そういったのが苦手な方や心臓の弱い方は注意が必要かもしれません。

物語の大きな軸に、セックスと男女と老若があります。
まず問われるテーマが
・恋人以外とセックスして良いのか?
・愛はどうなるのか
という点です。
そこで、唯一の処女枠だった女性がビッチ枠に寝返ることにより、その彼氏だった男性だけが、いわゆるセックス=愛という考えの者となったようでした。

ビッチ共に着いていけないその男性が家から離れようとした矢先、くそば…失礼。お婆さんに言い寄られるのです。
このお婆さんが、本当に気味の悪い見た目で、ほぼ骸骨といった様子。
白髪は薄く禿げており、シワシワの顔、黒目が大きく、歯はボロボロ。
90歳はゆうに超えていようかという見た目ですが、存分に性欲があるらしく、同じくシワシワ爺さんの旦那を性的に誘っても断られていました。

なので、この男性に自分を女性扱いしてくれと詰め寄るのです。恐ろしい、おぞましい…。そして同時に凄く悲しさを感じました。
そこまでして女性でいたいですか…。
男性を誘って、良い言葉をかけてもらって。
個人的に男女というものを押しつけてくる人間が苦手なので、化け物のようなお婆さんが自分の女性性を突きつけてくる展開が悲しかったです。

そして、男性が受け入れずに拒むと、手に持っていたナイフで首を一刺し。
そのナイフ、最初から持ってましたよね。片腕を隠しているのを見逃しませんでしたよ。
拒まれるとわかっていて誘い、そして殺した。
自分を受け入れない男性に、不満をこれでもかとぶつけるがごとく、首めがけて数十回あまり滅多刺しにして、男性の首は原型をとどめませんでした。

ここから、婆と爺の虐殺が始まりますが、キャラクターたちほぼ即死です。ただただ音にビックリするばかり。正直退屈でした。
目を刺したり、ワニに食われたり、バリエーションを持たせているつもりでしょうか。
苦痛要素がほとんどゼロに近いので、どんな死に方だろうが変えが効くでしょう。
ただ死ねば良いってもんじゃないと思うのですけれどね…。

あと、やはり、歩くのもおぼつかないようなガリガリの婆と爺に、ムキムキ男性を含む人間が次々に殺されていくのは、不自然すぎました。
足に釘が刺さるシーンも謎です。
その後の死に方はもっと謎です。
映画の不自然は多少容認するタイプですが、これはちょっとあまりにも。

途中で婆と爺が愛を確かめ合い、セックスするシーンがあるんですが、ここで気付きました。
この婆は、爺のことを愛しているわけではなく、自分のことが好きなのだ、と。
爺は常に婆のことを口にしていて、婆は一貫して自分のことしか話しません。

生き残る女性に向かって第二の主軸テーマを投げかけます。
・あんただっていつかこうなる(老いる)のよ
女性は「あんたみたいにはならない」と言い返しますが、この掛け合いもすれ違っているように見えてました。

婆は男女のテーマを訴えていますが、生き残る女性は映画の意外性のためのメタな存在であると考えてました。
女性の口癖は、「私らしく生きられない人生は受け入れない」。そして事あるごとにドラッグをキメる。本来のホラー映画のセオリーでは真っ先に死ぬ側の女性なんです。それにただ抵抗するための存在。
だから彼女のセリフには魂がない。
婆の訴えには、生き物としての苦悩があります。

婆の提起した問題に対して私から言いたいのは、
老いることと、自分の快楽のために人を巻き込んで傷つける害悪さは同一ではないということ。

最終的にこの婆は、脳天ぶっ潰されて死にます。
これもまた即死。私の心は不満でいっぱいです。

婆が最後まで≪生き残る女性≫に対して執着していたこと、ずっとテレビで流れていた宗教の教祖の娘がこの女性だったことと関連性はあるのか。
映画を見ていただけでは完全に把握することはできませんでした。
エンドロールの後に続編があるという告知がありました。
婆の昔話らしいのですが、これも生き残った女性と同じ女優が演じているようです。

以上、これだけの感情が生まれてくる凄い映画でした。
感想を一通り書いたので、ゆっくり考察ブログなど巡ろうと思います。

かなり感情的なレビューになってしまいました。ご不快に思われた方がいましたら、お詫びいたします。

あ、裸オーバーオールはフェチに刺さりました。すごく良かったです。

追記:色々と考察やレビューを見て回りました。

人の家でポルノ映画撮ったり、全裸で歩き回るの非常識は、従来のホラーなら殺される十分な理由になったと思いますが、自分を女として見ない男性を殺しまくったり、旦那の体調を無視してセックスを迫る気色の悪い理不尽さは、「いけすかない若い連中だから殺されても仕方ないか」という共感性をもろとも破壊したと思います。

ババアは若い頃ファイナルガールであった=良い子だった抑圧で性欲が溢れてしまったという考察を見ましたが、60年経ってもずっと続くあふれんばかりの女性の性欲は非現実的すぎませんか…?
御影LIN

御影LIN