御影LIN

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密の御影LINのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

R13+

始まり方や大枠の構成はよく目にするタイプの探偵モノのようです。
中盤からそれが覆っているのかなと思います。
私自身、探偵モノに疎いので比較評価が出来ません。
ただ、恐らくステレオタイプなストーリーは「犯人が最後までわからない」という事なのではないでしょうか。
このお話は、かなり早い段階で犯人を判明させて進んでいきます。
最後の最後まで残る謎を追いかけながら。
そこがもしかしたらこの映画の面白いところなのではないかなと思います。

007でボンド役を務めた俳優さんが探偵役。
コミカルな雰囲気の映画なので、コメディ調のリアクションが新鮮でした。

作家として名を馳せ、一代で築きあげた特大資産を持つ家族の大黒柱、当主のおじいさん。
この人が首を掻っ切って自殺、この描写ゆえのレーティングでしょう。
個人的にグロさ怖さはほぼ無いと思います。

探偵の元に分厚い札束とおじいさんの情報が送られてきて、一見自殺に見える事件を深掘りしていくストーリーです。

遺産相続の遺言の開封式。
そこで宣言されたのは、
「8000万ドルの現金資産、屋敷、出版物の販売権利に至るまで余すところなく全て、マルタに託す」であった。
税理士も驚き、一族騒然、マルタは大混乱。

年齢的にも年少者にあたるマルタに多額の富が舞い込んでくる流れはありがちながらちゃんと面白いですね。
雇われるという立場から逆転し、一族の長に成り上がってしまう。
100億近い現金資産…。

自分に置き換えて考えてみました。
お金持ちになった時点でやることが増えまくることが予想されるので、それだけで骨が折れますが、まずは身内を信頼できる人で固めていくことから始めないといけませんね。
最初は従業員との面接の日々でしょう。
その後落ち着いたら、世界一周したいです。
そして学校を建設したいなと、そこまで考えて絵空事を辞めにしました。

おじいさんのセリフに「私は家族を支配したかっただけなのかも知れない」というようなものがありましたが、お金を出すという行為が支配的だという考え方に同意します。
与えるということに優越を感じることは傲慢であるし、優越と引き換えに金銭を受け取るものは自らのプライドを差し出すことにのみ価値を見出すと思う。
それだけで、労働なんかよりも莫大な対価を得るなら安いモノだという考えになることは、仕方がないことだろう、と。
しかし、世の中には労働の対価として明確な基準額がある。その境界を見ずして、家族を甘やかし尽くしたおじいさんもまた、家族の堕落に加担したと言えるかもしれないと私は感じました。

そしてラスト、絶大なる、強大なる資産と地位を手に入れたマルタも、2階から家族を見下ろす形でおじいさんのマグカップを使う様子で締められました。
これはマルタがカーストトップに躍り出た演出かと思いますが、また一輪、毒の華が咲いたのだなと感じました。
御影LIN

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