御影LIN

ティム・バートンのコープスブライドの御影LINのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

R13+
アマプラで何十回めかの再視聴。
幾度となく見返している映画。
何度見ても最高で完璧。
造形もさることながら世界観の素晴らしさ。

蒼い蝶🦋がまず街を見回します。これから活躍する住人たちを眺め、そして主人公ビクターの元へ。
ビクターは魚屋の一人息子。事業は大成功を収め、大金を持っています。
成り上がりであるビクターの両親は、財産だけでなく地位も手に入れようと、貴族であるエヴァーグロット家の一人娘のところへビクターを婿にやろうとします。
エヴァーグロット家の両親は、身分の低い者を迎え入れなければならない現実に苦虫を噛み潰していました。
娘のヴィクトリアは相手が良い人であることを願い、そして家に来たビクターが弾くピアノの音色に惹かれて恋に落ちるのです。
良い雰囲気の出会いに二人の結婚は上手くいきそうでしたが、式のリハーサルでビクターは誓いの言葉を上手く言えずに大失態を繰り返します。
両家の両親と牧師は大激怒。
皆に責め立てられてビクターは夜の森に逃げ出しました。
もう一度誓いの言葉を練習するビクター。
今度は完璧!誓いの言葉を一言も間違えずに言い切り、指輪を木の枝に挿すと、怪しい風が吹き、カラスが飛び回ります。
指輪を刺した枝がいつの間にか白骨の手に成り、ビクターの腕を掴んで離しません!
土の中から出てきたのは…ウェディングドレスを着た死体の美女でした…!

この映画のいいところは、ビクターやヴィクトリアが生きる生者の世界に、まるで生気がないところです。まるで死者の国のようなモノクロームの退廃した色合いで表現されています。
街中の人々の顔色も悪く、両家の両親も何だか癖のある性格で好意的ではないし、出てくる料理は寒々しく、固そうで、全く美味しそうじゃない。
そんな荒んだ世界の中で、小さな純潔を燃やす若者であるビクターとヴィクトリアだけが輝いているようです。

それに反して、死者の世界といったら音楽が溢れ、鮮やかな色に満ちていて、死者の皆が一様に生き生きと笑顔で、全員楽しそうなのです。
一見おぞましい死体の花嫁であるエミリーは、肋骨は見えているし、目も足も取れちゃうけれど、些細なことで喜び、笑い、泣き、怒り、情緒に満ちた姿を見ていると不思議と可愛く思えてきて、魅力的な女性に見えてきます。

かつて駆け落ちしようとした恋人に無惨に殺されたエミリーは、土の中でやっと自分にプロポーズする人が現れたと勘違いして目を覚ましたわけですが。
それが勘違いだったと知るや大いに落胆します。
ヴィクトリアとの結婚に前向きだったビクターは、生者の世界に帰ろうと躍起になりますが、バタバタとしているうちにヴィクトリアは他の男と結婚するとの情報が入り、そして何より天真爛漫なエミリーに惹かれて、元の世界に戻ることを諦めます。
ビクターとエミリーが連弾するシーンで、毎回胸がはち切れそうになります。
余計な言葉もなく、二人が心を通わせる様を、見事に表現していると思います。

ここからどうラストに繋がるかも見応え十分です。死者が蘇った世界に混乱だけでない幸福が訪れ、散りばめられた伏線🦋も回収され、死者の世界の恐ろしい部分も垣間見えます。

ナイトメアビフォアクリスマスが小中学生向けなら、この映画は高校生以上向けであろうなと思います。
途中途中出てくるモブも気味悪さが一段回上かなと思いますが、クレイアニメの特徴である造形の可愛らしさがグロテスクさを緩和してます。
クリーピーアンドキュートです。

ストーリーやキャラクターの中に、これでもかと対比のモチーフをぶち込みまくり、四角関係も入れ込み、こんなに面白くて不気味で可愛くて美しくて、素晴らしい映画。
死ぬまで何度でも見ます。
製作陣に渾身の拍手を送ります。
ありがとうございました。
御影LIN

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