よしまる

午前4時にパリの夜は明けるのよしまるのレビュー・感想・評価

4.2
ジェーンバーキンがお亡くなりになって、母娘の映画「ジェーンとシャルロット」を見損ねたので、代わりに配信でこちらを観たらビックリするほど面白かった!
よしまる2023年洋画ランキング第5位です。

シャルロットとエマニュエル・ベアールの競演だけでもお腹いっぱいなのに、子供たち3人それぞれも負けず劣らず魅力的。

ストーリーは有って無いような、というのはフランス映画としてはむしろ当たり前。
街角の風景、インテリア、ファッション、音楽に没入し、ひたすら会話を楽しむのが見立てというもの。それが苦手な人は見る所が無い。

あ、そうそう、ちょっとエッチなシーンもヨーロッパ的で、やってることは大胆でエロいのに汚らわしさを感じさせないのが良い。要するに、他人が観てて嫌な気持ちにならないセックスなのだ。

現実のドキュメントフィルムを挿入する時に平気で画角が変わるのは少々残念だけれど、ボレックスの16mmカメラで撮られたザラっとした粒子の粗い映像が80年代の現実と虚構の隙間を違和感のないものにしている。
このためまるで2023年の新作とは思えないほどにノスタルジックな気分で観ていられた。いまなお人気の高いミッテラン大統領の時代を切り取ったのも、監督の郷愁なのかもしれない。

ミカエルハーズ監督は初めてで、ロメールやリヴェットの継承者ということかな、情感のこもった画作りが丁寧で、やっぱり観ていて気持ちが良い。
円熟のシャルロットとエマニュエル、そして子ども達を含め演技が素晴らしいことは言うまでもなく、これといったストーリーがなくてもひとりひとりの生き様を垣間見ることができて、それぞれがそれなりの希望を見出していく姿を映し出した映画がつまらない訳が無い。