よしまる

シン・仮面ライダーのよしまるのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
1.5
出来る限りハードルを下げて鑑賞したのだけれど、予想を遥かに下回った。飛び越えるハードルというよりむしろ下をくぐるリンボーダンスの最下位置をくぐり損ねたような虚しさ😭

公開時にちょうど多忙を極めてる頃で、確か最後のほうの第7弾あたり、入場特典エヴァとのコラボカードを目当てに行ったらそれまでの入場特典全部まとめてもらえた。つまり毎回それだけ余りまくったということなのだろう。

仮面ライダーはリアルタイムが幼稚園。記憶にあるのは新1号からで、さすがに旧1号は覚えておらず、ストロンガーからスカイライダーへの過渡期に再三やってた再放送。以来ほぼすべてのライダーを見続けているボクが言う。

なんだこりゃ。

まず主人公が本郷猛という名前の碇シンジ。このキャラクターに本郷猛という名前を付けるのは名誉毀損で訴えて良いレベル。あまりにも人物像が違いすぎる。
緑川ルリ子にコケにされてるのも、お役人に説教されて礼を言うのも、一文字隼人に命令されて従うのも、てんで意味がわからない。

様々な敵に長澤まさみ、西野七瀬、本郷奏多ら豪華キャストを整えながらすべて空回り。どれもこれもコスプレで学芸会みたいな様相。
優れた役者さんもこの脚本ではどうにもやりようがなかったのだろう。痛み入ります。

監督が浜辺美波に惚れ込んで撮ってることはわかる。ショットの一つ一つにこだわりを感じられる。ところがこのツンデレ女子が物語のテンポを著しく損ねている。「私は用意周到なの」と言いつつだいたい流されて行動しているし、なんの準備もなくあんなことになるし、シーンごとのキャラ変もすごい。まあ浜辺が何をしてても愛おしいと思える人はそれで良いのかもしれないけれど、めんどくさいビデオレターとか、まったくどうでもいい人のことも少しは考えて欲しいと思う。

そして特撮ヒーローとしてなによりも寒いのがCG。
初期の仮面ライダーは武器は持たず肉弾戦のみ、いまのライダーからすると殴る蹴るだけの戦い、最後の必殺技が飛び蹴りってギャグですか?と言われかねない状況な訳だけれど、それこそが燃える要素だった。

どんな高いとこにも平気で登り、しこたま仕込んだダイナマイトやガソリンで燃えさかる炎の中をかいくぐる生身のアクション。
これをリスペクトせず、馬鹿馬鹿しいCGによる空中戦(特に対2号戦がヒドイ)、人間味のない格闘戦、実車の出てこないニセライダーとのバイク戦、お金出してるお偉いさんたち、誰か止める人は居なかったのか?

公開当時散々な評判だった「仮面ライダーFIRST」「NEXT」のほうが、殺陣もバイクアクションも相当楽しめた。観たことない方は今からでも観てほしい。
そう、本作がいかにちっともワクワク出来ないかを逆に分かってもらえるかもしれない。

何で変身してから風を受けてるのかとか、何で変身してから変身ポーズをするのかとか、もうほじくり出すとキリがなくなるのでやめておくけれど……

結局庵野は脚本を書けないし人間ドラマも描けないし静止画は撮れてもアクションは撮れないということを(個人的に)確定させてしまった。

原作読んだことない人がキャラ設定だけ見て作ったようなトンデモ感。
これが「仮面ライダー」ではなく、「シン・仮面ライダー」だったことだけが唯一の慰みだ。