みほみほ

氷がすべてを隔ててものみほみほのレビュー・感想・評価

氷がすべてを隔てても(2022年製作の映画)
4.0
🐻‍❄️🐶🗻2024年62本目🗻🐶🐻‍❄️(字幕)

一つの判断が死へと直結する世界。序盤からは想像も出来ぬ過酷さに驚愕し、諦めの笑みすら出てしまった。

この時間で描き切るには、あまりにも期間が長過ぎる…希望を信じては折れ、どれだけの絶望の中でほんのひと握りの光を信じ続けたのかと思うと、映画一本では足らない。

それでもこの時間を最大限活かし、大切なところはメリハリつけて描かれていたので、雪と氷の世界の静けさの中でも不思議と退屈する瞬間はなかった。

プロの集団で挑んでも 生存に限界を感じるタイムリミットが迫るのだから、「生きてこそ」や「雪山の絆」で描かれた青年達の軽装備と食糧難がいかに過酷なものなのか思い知ることとなった。

本来人間が立ち入らなくて良い場所に踏み込み、探求する人間、探検に同行させられる犬達の命の扱われ方など複雑な思いを感じるし、国同士の熾烈な争いを感じさせる背景もあり、改めて人間の業の深さも味わいながら、隊長が命からがら守り抜いた仲間への想いなども感じ、感情がごちゃごちゃになってしまう。

想像よりずっと長期戦で、最後の方は着地によっては気が狂うところだった…。なんだあの政治家!と普通に頭に来てしまうけど、北極で起きてる真実をその場で知らせることが出来ない以上、予算が限られる中で 無謀な探検に出る人にどこまで予算を割り当てるのかの判断はとても難しい。最終的にどんな決定で再捜索が許されたのか、細かい背景をもっと知りたくなった。

どんな冒険者もこういう奮闘の末に命を落とす人と生き残る人がいて、皆何かを残そうとしたり 精一杯生きてることを感じて胸がいっぱいになった。2人に限った話ではなく、探検に出て生きて帰らなかった仲間への鎮魂歌でもある。

現実はもっと過酷で、無の時間も膨大だと思うけど、あの行動がミスになるなら もう一つの行動をやらなかった場合も 北極の歴史に大きな穴が空く大変な事態になっていただろうし、運命って不思議なものだと思う。

隊長の信念も探究心も凄いけど、周りの巻き込み方がちょっと異常で、他のメンバーも引く中で立候補する整備士のちょっと危なっかしいタフさが光ってた。彼の芯の強さがなければ二人共正気ではいられなかっただろうし、随所で発揮する整備士スキルが生存能力の高さを見せつけてくれて、経験では上を行く隊長すらも納得させてしまうアイバーが頼もしかった。

なんとなくタイトルの雰囲気が好きで観ようと思ったのだが、鑑賞し始めた時間が深夜帯だったので、静けさを存分に吸収しながら雪と氷に囲まれた北極の世界に浸れて没頭。冬の深夜に観る雪山って それだけでなんか気持ちを高めてくれて良い。

アイバー(整備士)演じた俳優さん、「暁に祈れ」の人なのね!まだ観ていない作品で、とても気になっていたのでそのうち観たいと思う。

主演の方(隊長)はユアン・マクレガーだと思ってたら全然違って始まった瞬間に勘違いに気付き笑った。

それにしても皆さん、割とクオリティ高いNetflixオリジナル作品にも 厳しいな〜🦂
Netflixオリジナル作品って、ヒットしてるものとそうでもないものがハッキリしやすいからか、知名度低めの作品で掘り出し物を見つけた時はかなり嬉しくて、熱意そのままに感想書きに来ると、大抵ここで低評価にされてる印象ある…。

本作は犬の扱われ方が酷いから、現代の映画市場で売りとして使われてる「犬は無事です!」みたいなのに慣れた人にとってはかなりしんどいだろうし、犬飼ってなくても苦しい。そういう側面で低評価付けられてるのもありそう…

しかし現実だからな…映画だからって犬助けるシーンを嘘で付け加えるよりも、実際に過酷な場所に連れていかれた犬達をしっかり描いてくれる方が信頼出来るし説得力がある。それも含めて人間の身勝手さも描いていると思うから。

地球上には人間が踏み込むべきではない場所が多くあることを思い知らされました。
みほみほ

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