橘

PLAN 75の橘のレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.2
心情を台詞で語らないのが凄くいい。
気持ちの変化を表情や行動で観ている側に考えさせるの…こういう問題ってハッキリと答えを出せるものではないのでとっても良かったです。
内容を落とし込んで咀嚼するには身近に置き換えて考えるしか無いので気持ちが落ち込みますが。
日照鬱気味で冬は落ち込んでいるのがデフォルトなので、冬に観てたらしばらく立ち直れてない。

75歳過ぎたら死んでくれ…みたいな政策、荒唐無稽とも思えないのがディストピアジャパンかなり詰んできたと思う昨今です。
年寄り笑うな行く道だ、と思ってるのでPLAN75も当の対象者だけでなく勧めたりケアする方のメンタルも削れていってしまうと思いました。
「75歳以上はこの社会では無理です」を目の当たりにして、自分の行く末を思わない人なんていない。
圧がすごい。外堀から埋められていく感じ……「住民票なくてもPLAN75制度は受けられます」というのも、10万円貰えるというのもリアル。
10万円安くない?と思ったけど、政府が出すとしたらこのくらいの値段なんだろうな。コロナ給付金も10万円でしたしね。。今思い出した。
なんにも解決して無くて問題は山積みなままという結末もよかった。進むも戻るも地獄。

倍賞千恵子さんはPLAN75受けるくらいの年齢の人では動ける方だと思うし受け答えもシャッキリしてる役だったけれど、それでも一律に年齢で区切られるのかという重苦しさが際立ってました。お声が凛としてていい…ハウルの動く城。。
磯村勇斗さんも河合優実さんもよかった。相手に感情移入してしまうとマズいというのがよくわかりました。かといって淡々と機械的にされるのも…だけど、若者のメンタルのためには仕方ないのかも。
施設で働くフィリピン人ステファニーさん、見覚えがあると思ったら、2つの顔をもつお風呂屋さん映画『メランコリック』の人だ。アウシュビッツ収容所の遺品係みたいな役だったな…外国人なら特にこう思った人居そう。外国人労働者ならこういう仕事させても構わないみたいな政府の思惑が嫌だ。


「自分で最期の時を決める」と聞かされていたし思っていても、実際は薬で強制的になので「選んだんだと思っていたけどそうではなかった」と気付いた恐怖……独りだったら「しゃーない、ここまで来てしまったんだから」と諦めつくかもしれないけど、お隣の人の様子を見てしまったらもうだめ。
ミチさん、生命力もあったんだろうな。おじさんは抵抗力も下がってたのか薬の効きが早いけどミチさんは睡眠導入すら全然効いてない。

いやぁこの先どうなるんだろう。
希望が見えないところもディストピア作品としてちゃんとしていました。
日々生きてく中であまり向き合う事ないけど、かといっていつまでも目を逸らしたままではいられるはずないのでいつかは向き合わねばならない、人生の仕舞い方。
『ソイレント・グリーン』とか「百年法」とかこのへんはまだエンタメ度が高いですがこちらは淡々としてた分、切実でした。
橘