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ザ・ホエールのHKのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.7
先日観た『生きる Living』に続き、またしても余命わずかな主人公の物語。
画面サイズがどちらも昔のTV画面を思わせるスタンダードなのも共通ですが、『生きる~』はレトロ感を出すためで、本作は主人公の巨体をより際立たせるため?

本作は元が戯曲だし、主人公が動けないせいもあり、舞台はほぼアパートの一室のみの室内劇であり会話劇。
主要な登場人物も、主人公の他はその家を訪れる4人のみ。

映画が始まると、余命数日の巨体の主人公の願いは、8才のときに捨てた娘と、いまさらながら距離を縮めることだとわかります。
しかし、久しぶりに会った主人公に罵詈雑言を叩きつける17歳の娘を見る限り、正直、残された数日でこの願いを叶えるのは絶望的。奇跡でもおこらない限りムリに思えます。

妻子を捨て、自業自得とも言える人生を送っている主人公に同情の余地は無く、また、捨てられたとはいえ、ドロップアウトしたまま人生を送り続ける元妻と娘もある意味同じ。
そして主人公の世話をする看護師の女性も、宗教活動をする若者も、それぞれに自分勝手な思いがあり共感するのは難しい人たちです。

それでも、主人公をはじめとするこの各キャラクターたちの言葉の応酬や表情の動きには引き込まれます。
それは、一見かなり特殊な境遇の人たちのようでも、それぞれが抱える想いや言葉にわずかでもこちらと共通する要素があるからでしょう。

とくに主人公になりきったブレンダン・フレイザーの一挙手一投足から目が離せません。
過去作品で覚えているのは『ハムナプトラ』シリーズ、『タイムトラベラー/きのうから来た恋人』『モンキー・ボーン』くらいで、正直、これまで演技派だと思ったことはありませんでしたが。

しかし、贖罪や救済といったキリスト教的要素については我ながら苦手で不勉強ですし、しかも本作はあの『マザー!』のダーレン・アロノフスキー監督作。
奇跡はしっかり目撃しましたが、私に本作を100%読み解くなんてことは永遠にムリでしょう。
HK

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