クリンクル

ビリーバーズのクリンクルのレビュー・感想・評価

ビリーバーズ(2022年製作の映画)
5.0
前作『女子高生に殺されたい』は「女子高生を性的なものとして描きたい!」「猟奇的な女子高生を観たい!」という欲望を逆算から作った言い訳のような映画で嫌いだったんだけれども本作は驚くほど良かった、良すぎた

ピンク映画を撮ってきた城定監督にしか撮れない映画になっているし、はやくも監督の集大成感すら漂ってる(さすがにピンク映画はチェックしてないのでイメージでしかないけど)
そして何より、撮りたいものに正直であるように思えた

繰り返し引き合いに出してしまうが、前作では特別な異常者として教師に背負わせてしまった変態性が本作においては自分の心に忠実で真摯な正直さとして存在していて、映画の話以上に作品そのものが私たちの欲望を優しく肯定しているようだった

もちろんそれだけではなく、そういった剥き出しになった欲望によって犠牲になるものすら描いてみせたのが本作の凄さのように思う
カルト宗教がその信徒から搾取するように、信徒もまたより弱い立場のものから搾取してしまう
公開日に事件が起こったことで触れずにいられないが、ある種の特権をもっているなら暴力を使ってその場から脱することもできたかも知れない
しかし、ここが逃避先である弱い立場の人たちは更に逃げる事はできない

だからこそ最後2人が更に弱い立場の者を見つけて宗教の教えよりも自分の衝動に従ったシーンには胸を打たれた

予期しない形でタイムリーな映画になってしまったが、普遍にこれからも観られるべき傑作