ねむ

オリエント急行殺人事件のねむのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(1974年製作の映画)
4.0
超豪華キャストによるミステリー映画というジャンルの原点的作品。
CGと特撮ではなく、キャストと衣装とセットこそが「超大作」の証明だった時代です。
このころの豪華な娯楽大作は、観てるだけで豊かな気持ちになれますね。

舞台設定としてはふたつの世界大戦の中間の時代、1930年代で、ロシア革命や世界恐慌はすでに起こり、ナチスが台頭し始めた…ってあたりのヨーロッパですが、そういった時代の暗い足音は一切感じられません。
殺人事件を扱ってるにもかかわらず、終始エレガントで瀟洒な雰囲気が漂います。

クリスティの原作自体が1930年代に発表されてるのですね。
そして小説の元ネタとなった誘拐事件も、その数年前の発生。
今で言うと、とにかく世界的に有名になった犯罪事件を題材にリアルタイムで一本書いた、みたいな感じでしょうか。

今改めて観ると、ババアの魅力に目が行く映画でした。
普通に言うとローレン・バコールとかイングリッド・バーグマンに注目ということになるんでしょうが、格別に印象深くて一度見ると忘れられないのが、「princess」と呼ばれるロシア出身の老公爵夫人(ウェンディ・ヒラー)。

別に怖い役柄ではないのに、不気味な存在感で、横溝正史映画に出てくる、コケオドシ要員の婆さん的な怖さです。
実際には60代前半だったそうですが、老けメイクと演技で90歳くらいに見えます。
この公爵夫人の付き添いをしてる、ごついメイドのBABAAも無意味に鋭い目つきがグッド。
そしてそんな一癖二癖ありすぎなBABAAの楽園に咲く一輪の(BABAAじゃない)花・ジャクリーン・ビセットの匂うような美しさ!

クリスティ原作の「オールスターミステリー」映画は何本か作られてますが、最初に作られたこれが一番有名なだけあって、各キャラもばっちり立ってると思う…。
登場人物の多さにも関わらず混乱することはありません。
(他のは若干混乱する気がする)

犯人はすでにもう有名です…かね?
私も最初に観た時犯人を知ってたので、まっさらな状態で観てオチにびっくりという体験は、残念ながらしてません。
「犯人知らないよ」という幸運な方は、そのままの状態で是非どうぞと言いたい。
ねむ

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