てつこてつ

愛に奉仕せよのてつこてつのレビュー・感想・評価

愛に奉仕せよ(2022年製作の映画)
3.3
「ビー・デビル」「シークレット・ミッション」という全くテイストが異なる二作品のチャン・チョルス監督作品だが、これまた違う作風で、なかなか見応えがあった。

時代と舞台は1970年代の北朝鮮と思われるとある国。社会主義、軍国主義のイデオロギーから大きく逸脱する上長の満たされぬ妻との肉体関係を結ぶ若い兵士の姿が、時に大胆な性描写と共に、時に繊細な情緒を交えて描かれていく・・。

中盤までは、ありがちな安っぽい不倫ドラマの雰囲気で二人の男女が交わす台詞も少し陳腐で途中で離脱してしまう人もいるかもしれない。

それでも、夫婦間で結ぶ血判であったり、軍隊における昇進がどれだけ家族にとって重要なものかという共産、社会主義、軍国主義ならではの価値観は非常に興味深い。

中盤以降、不倫映画にありがちなお決まりの展開にならないのもいいし、要所要所の細かい監督の演出の技が効いている。

2時間半とはかなりの長尺ではあるが、個人的にそこまで長くは感じられなかった。全体的にアートな雰囲気があって自分好み。同じく軍人のW不倫をテーマにした韓国映画では、性描写については圧倒的に攻めた「情愛中毒」と少し似た切なさがあっていい。

ただ、キャラクター設定のせいもあるかもしれないが、主人公の兵士を演じたヨン・ウジンが原田龍二に見えて仕方なかった。

最初のエンディングロールが流れた後に重要なシーンが一つ入ってくるので、鑑賞される方はお見逃しなく。
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