むさじー

LOVE LIFEのむさじーのレビュー・感想・評価

LOVE LIFE(2022年製作の映画)
3.6
<孤独ゆえ求める人の繋がり>

妙子は再婚した夫・二郎と息子の敬太と団地に住み、幸せな日々を送っていたがある日、事故によって最愛の息子を亡くしてしまう。そして悲しみに沈む妙子の前に、失踪した前夫で敬太の父であるパクが戻ってくる。再会を機に、ろう者であるパクの身の回りの世話をする妙子だったが、一方の二郎も以前付き合っていた彼女との関係が再燃して‥‥。
矢野顕子の同名楽曲に触発されて20年間映画化を温めてきたというが、歌詞を読んでもピンとこない。共通するのは愛と孤独、それゆえに依存し関係を求めるといったところか。映画ではさらに嘘と裏切りが加わる。
突然の不幸な出来事で幸せな日々が壊れ、自分の本心がどこにあるのか分からず、どう生きるべきか人生の選択に揺れる。再会したパクを巡る妙子の心の揺れに二郎は翻弄されるが、妙子自身も逡巡する思いに翻弄されていたのだろう。
何とも身勝手な人物ばかりでとても共感できないが、気づかずに人を傷つけているのが人間なのかも。愛とはわがままで愚かで残酷なもの、と思えてくる。そして人は孤独だが、それでも誰かと生きることを求め、依存であれ奉仕であれ、繋がることで生きていける。それが愛という名の拠り所なのかも知れない。
苦さと笑い、重さと軽さが微妙に混濁しているのがいい。終盤はいきなりのコメディで、この振り幅の大きさには正直困惑した。この顛末で救われた気がするし後味は良かったのだが、一層混沌とした世界に入ってしまった気がする。
鳥除けに吊るしたCDの反射光の揺れは心の揺れで、オセロは白黒がくるくると反転する人間関係のメタファーか。映像表現は結構細かい。
むさじー

むさじー