むさじー

人生は、時々晴れのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

人生は、時々晴れ(2002年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<大事なのは思いを言葉にすること>

ロンドン郊外の集合住宅。タクシー運転手のフィルは、スーパーで働く妻ペニー、老人ホーム掃除係の娘レイチェル、ニートの息子ローリーと質素に暮らしている。心を開かない娘と反抗的な息子、妻との間にも距離が出来て家族らしい会話は失われていた。そんなある日、ローリーが心臓発作で倒れて思いがけない展開に‥‥。
フィルの家族以外にも、その同僚や近所の家族が群像劇風に描かれるが、それぞれに問題を抱え、社会の底辺で貧しく暮らす人たちの日常が淡々と描かれていく。そして息子ローリーの救急搬送を機に、しばらく会話の無かった夫婦がそれぞれの思いを吐露する。フィルは「生活に疲れた。君は俺を愛していない。死んだ方がましだ」と涙ながらに告白し、ペニーは「いつも孤独で寂しかった」と返す。もはや演技を超えていて、二人の溢れ出す涙に感動した。
原題は『All or Nothing』イチかバチかの意味合いだが、フィルが現状を打破するために発した妻への言葉こそが、このタイトルの意味するところか。邦題は更に映画のメッセージに沿っている。家族といってもいつも円満な訳ではなく、曇りや雨の日があるから晴れた日が一層輝くもの。時々訪れる晴れの日を糧に生きていくのが人生、と解した。一見ハッピーエンドと思われるラストシーンだが、決して晴れの日ばかり続く訳はなくて、悪天候との繰り返しで生きていくのかな、という気はする。
「人生とは孤独感と、一人ではないという感覚が複雑に絡み合ったもの」はマイク・リー監督の言葉。映画は暗くて重いが繊細で深い。人間を真摯に見つめ、心のヒダまで徹底して描こうという姿勢が見える。
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