サンタ

ロストケアのサンタのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
4.4
「ロストケア」
英題「LOST CARE」

“さもありなん。”

救ったのか。殺したのか。
変わるものと変わらないもの。
変えられるものと変えられないもの。
安全地帯から眺めている者と穴の底でもがいている者。
天使と悪魔の仕業。若者と高齢者。
“絆”とは救いにも、呪いにもなりゆる。
絆からの解放は、救済か。殺人か。
少子高齢化が深刻化している日本の最大の課題である『介護』をテーマに描き出した作品。
監督は『ブタがいた教室』や『そして、バトンは渡された』などの前田哲さん。
そして、主演は私の地元、青森県出身の松山ケンイチさん。
『デスノート(藤原竜也さんの方)』の“L”を演じている方です!
憑依的な演技や、個性的なキャラを演じるのがとても上手な方だなと思います😆
さて、映画の感想に戻ります٩( 'ω' )و
映画の序盤、ある事件が起きます。
この事件をきっかけに、ひとつの介護センターでたくさんのお年寄りが亡くなっていることが判明します。
お年寄りのお世話が大変。
この生活から抜け出したい。
そんな悩みを代弁するかのように。
次々とお年寄りは不可解な死を遂げた。
介護センターに働いている人に、事情聴取するが、展開は変わらない。
最終的に、ひとりの介護士に視点がフォーカスされる。
その介護士こそが松山ケンイチさんが演じる斯波宗典という男。
普段は介護に献身的で、仕事仲間からの評判も高く、信頼されている方ですが、若さに合わないほどの白髪の姿から不思議がられる様子。
同僚からは昔に苦労していた方なんでしょうと言われる始末。
そんな斯波に事情聴取がはじまるが、徐々に色んなことが指摘され、ついに自白します。この発言が今作の肝であり、最大のテーマでもありますよね。
僕は42人を“救いました”。
世間は殺人と捉えることに、彼は救済と捉える。
日本は法の下の平等の基に、法治国家でありますが、どうしても穴は存在して、全ての人が助けてもらうとは限らない。
だから、法の外に抜けようとする人もいるのですかね😔
介護も大変な想いをするのは家族みんなであり、中でも認知症の方なら、24時間見守らなくてはなりません。
たまに外に出て、行方不明になるニュースとか見ることがあります。
介護士さんが真摯な想いで、手伝ったとしても、それは明るい時間のみで、夜は家族が見てあげないといけない。
この手伝いで、たくさんのひとが救われていると思いますが、それでも完全に心が癒えるとは限らない。
だって、ふつうの人なら寝ている時間に、睡眠時間を削らなければいけないんです。
そりゃあ、ストレスだって溜まるし、物に当たったりとか、ニュースになるような事件も起きますよね。
殺したら、その人が悪いのは当たり前ですが、少子高齢化というわかりきった事実から逃げ続けて、対策をとらなかった国にも罪はあると思います。
若者の国に支払う量は多いのに、高齢者がもらう年金の量は少ない。
しかし、国で働く議員は大儲け。
もう、この時点でおかしいし、国のトップがこれじゃあ、年を経るほどに、差が広まるばかり。難しい問題ですね🤔
また、自分の家族とは切っても切れない“絆”が存在しており、それが違う視点から見ると呪縛=呪いに感じてしまうのかなと感じました。
これに関しては、介護に経験のある方と、経験のない方で違った考え方、捉え方がありそうです。
人を殺める事実だけが存在するだけでなく、介護からの脱却は果たして救い=救済となるのか、見終わったあとは、色々と考えさせられるし、余韻が次の日までのこるし、難しい問題を、ひとつの娯楽である映画としてまとめたのは素晴らしいなと思いました。
キャストのみなさんもとても演技がうまいし、とりあえず今のところだと、今年の日本アカデミー賞はこの映画かな。
ラストもスパッと終わって、エンドロールで余韻に浸らせるのも良い。
最近の邦画はエピローグが長いですから。
ひとつ残念な部分があるとすれば、最初の聖書の引用はいらないかな。
宗教とかなしに、介護だけを取り上げてほしいので。
そこを抜かせば個人的に、邦画のなかでは近年稀にみる、良作だったなと思います。
介護に興味がある方や、ヒューマンドラマが好きな方、俳優さんの名演技を堪能したい方はおすすめ‼️

〜あらすじ〜
ある民家で事件が起こり、死亡した介護士と同じ介護センターで働く斯波宗典が捜査線上に浮かぶ。彼は献身的な介護士として利用者家族からの評判も良かったが、検事の大友秀美は斯波が勤める施設で老人の死亡率が異様に高いことに気付くが...。

2023-11🚬
<ひとこと。>
ここからは少し小話になりますが、どうして介護をテーマにした作品って暗いものばかりなんですかね。
特に日本ですよ。
今作も然り、カンヌ国際映画祭で話題になった『PLAN 75』も暗くて、これみて若者はじゃあ介護士になろうと思うのかな🤔
確かに暗めの作品も大事ですが、『最強のふたり』みたいな明るく前向きな作品をつくることも介護に明るいイメージも希望ももてるのになあと感じました。
日本は何でもかんでも社会問題を暗く描きがちですが、海外みたいにまた違った視点で明るく描くことも大切なのではないかと思いました。

あと、今月で長澤まさみさんを映画館で2回も見るとは、びっくりしました😲
月に2本も映画があるってすごいなぁ。
サンタ

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