翼

13人の命の翼のレビュー・感想・評価

13人の命(2022年製作の映画)
3.9
似たシチュエーションではチリの『33人』があるけど、あちらは救助される側の心理描写で史実を捉えているのに対し、本作はまさかのダイバーズミッション映画だった。
残された家族、国、メディアの期待が、「発見できれば良い」(遺体でも会わせてほしい)→「一人でも助かれば良い」→「全員生還を」と高まっていく。出来るなら最上の結果を求める心理は当然と言えばそれまでだが、期待がプレッシャーとなり助ける側を追い込んでいく構図の描写は見事。
救助対象者のみならず、レスキュー隊員の最後の一人が助かるまで笑顔を許さなかった緊迫感は息が詰まった。
見る角度によって表情の違いを見せる仏像は信者以外にはどこか不気味にさえ映る。災害を神の怒りと捉え、「お許しください」と祈りを捧げることへの違和感を、外国人の目線で撮っている。食料もない洞窟最深部でら10日間生き抜いた少年たちの精神を支えた宗教・瞑想など、フォーカスし語るべき要素は他にもある。これはタイの映画ではなく、ロンハワード監督の解釈によるアメリカ映画であると感じられたので、同じ事件をタイ人の監督が撮った作品があれば見てみたいと思った。
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