グラビティボルト

別れる決心のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
3.8
毎度眠くなってしまうチャヌクだが、今回は起きていられた。
事の真相云々ではなく、ただ興味を持続させる為に炸裂する力んだ技巧が興味深い。
特に、刑事と被疑者の女が心理的に近付いている事を示す、何でもない車での尾行で繰り出される
ウィンカーのタイミングが舞踏的。

どんなにわざとらしくとも、動きの連動で心の距離を縮めようという試みはしっかりとある。
あのお寿司の場面も、真俯瞰、滑り込んでくる容器、あざといなと感じつつ、タン・ウェイがおしぼりを投げるショットがちゃんと後のスマホ投擲に繋がる周到さ。小賢しいとも言える。

流石にタン・ウェイを若尾文子に見立てるのは難しいし、男女の分からなさだけで魅せきる濱口竜介的な手腕があればもっとタイトかつ冷酷な映画になれた気がするが、「お嬢さん」までにあった退屈な耽美表現が霧散して、ただ不器用かつ天丼なメロドラマに徹してるのが潔いなと好感。