グラビティボルト

逆転のトライアングルのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.5
オストルンドの映画は初めて。
甲板での蝿の羽音や、レストランでの音楽のオン/オフ、ピンの合わない画面奥でのウェイターの機械的な振る舞い、
映っている人物の男女関係や役職で三角関係(トライアングル)を作ろうとしたり、凝りに凝っている。
こういう凝りを凌駕して、豪華客船が突如揺れ始めて、明らかに船酔い症状を出しているブルジョアが、次から次へと嘔嘔吐&失禁し始める中盤は流石に迫力があった。
あと、乗客の体調不良を無視して料理を運ぶウェイターの無機質さも強烈。
船の揺れが特に原因不明で、直接的な遭難のきっかけになっていないのも面白い。
要は、何故かパーティ会場から出られない「皆殺しの天使」辺りのブニュエル的な不条理を狙っている。

ただ、遭難して以降のサバイバル劇は
前半〜中盤の不条理さとは打って変わり、全てが階級社会の縮図とその逆転に終始して突発的な事態が起こらないし、
上述した画面外の音で凝る演出も鳴りを潜め、一気にパワーダウンする印象。

突然画面から消えるウディ・ハレルソンが一番不条理だった。