りっく

逆転のトライアングルのりっくのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.6
世の中に蔓延るヒエラルキー、それは収入や人種や性別だったりする。その価値観に基づいて人を見下して蔑んだりする鼻持ちならない輩たちを、豪華客船にぶち込み、荒波に揺らされることで阿鼻叫喚の世界に引きずり降ろし、文字通り従来の価値観を転覆させて、何もできないスッカスカの人間性を露わにする。

リューベン・オストルンド監督の人間に対する悪意のあるシニカルな目線は本作でも健在で、固定化された価値観でのうのうと生きる輩たちをカオスにぶち込み、その鼻をへし折りまくる展開は分かりやすいカタルシスも生じている。中盤の嘔吐合戦も、作品内で忘れがたい瞬間最大風速を吹かせてみせるオストルンド作品ならではの爆笑場面だ。

だが、前作「ザ・スクエア」と比較すると、鋭い観察眼はやや減じているように思える、特に三幕目の島に流れ着いてからの人間模様は、かなりステレオタイプ的で特に新鮮味も驚きもない。風刺劇としてはありきたりなものになっているのがやや物足りない。
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