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トリとロキタのkのレビュー・感想・評価

トリとロキタ(2022年製作の映画)
4.2
ダルデンヌさんたちは全く衰えない、というか熱がどんどん増していくイメージ
角度は違えど毎回鋭く、確実に捉えてくるなぁ

移民・難民問題って、日本人にはどうしても馴染みが薄くて、関心も低いと思うんです。
身近な存在でないということ自体は平和な側面であり、それと無知無関心はまた別の問題。トリとロキタは同じ運命を辿った、あるいはこれから辿る同じ子供たちを投影した知らなければいけない問題でしょう。

トリもロキタも演じた子は演技未経験だとか。なんだか経験してきたかのようなあの不安さと、健気さと、本物の姉と弟であるかのような仲の良さと、胸を締め付けてくるんですね。
で、彼らから搾取する大人たちは基本的にカメラで顔は映してもすぐに声だけになって、トリとロキタの顔が映し出される。終始、ストーリーに大人は関わってきても、すぐトリとロキタ2人を主体にした映像で、あくまで大人は顔の見えない無慈悲な声としての存在に留まるようにしているんですね。

あと、2人の歌が印象的なんだなぁ。
BGMもないなかで、着信音として小出しに使われる2人の歌声。
2人の距離が離れてしまえばなお、弟からの唯一の連絡手段を告げる合図として歌声がより強調されます。で、エンドロールもどんよりした暗い胸の内に、2人の嬉々とした歌声が響き渡るんですよね、ある意味1番しんどいです。

話変わりますが、
いま異次元の少子化対策って、岸田さんが言ってますけど、実際問題、この様子だと日本もこうなる気がしてます。
ろくに暮らしていけない子供が増えるか、日本を出て海外でトリとロキタのような運命を辿るか。
少なくとも日本の未来に希望は見いだせません。
遠からず、より身近に現実味を帯びてこの映画を観れる日が来ると思うと、それが一番恐ろしいですね。
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