mity

聖地には蜘蛛が巣を張るのmityのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.0
あまりにも違いすぎる文化に、ショックを受け続けた映画だった。そしてこれが、実際の事件に着想を得て制作されたというんだから、イラン社会に対する理解し難さを感じて、しょうがなかった。

イランの聖地マシュハドで起きた売春婦ばかりを狙った連続殺人事件。スパイダー・キラーと呼ばれた殺人鬼は、家族を持つ平凡な男···私にはサイードの狂気としか言いようがないように思えたけれど、自身を肯定し、それを支持する者たちがいるんだから、その根強いミソジニーに言葉を失うしかなかった。

行き当たりばったりといっていい、サイードの凶行。なのに捕まらないサイード。捕まらないこと自体が、この社会の歪さを物語っていて、そしてそれは継承されゆくのだという事が示されているラストは、余りに強烈で痛烈だった。

ラヒミ視点で描かれる、暴力を受ける側のあらゆる理不尽さと、サイード視点で描かれる、暴力の正義化の風潮。“おぞましい”筈のこの事件を、“おぞましい”と捉えない社会に、暗澹たる気持ちになった。


#39_2023
mity

mity