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あちらにいる鬼のchaiksのレビュー・感想・評価

あちらにいる鬼(2022年製作の映画)
3.0
「ぶっ飛ぶという覚悟と幸せ」

寂聴さんもあちらに逝かれて早くも三回忌が過ぎ
とうとう寂庵へ伺うことは叶わず初見
相手の奥さんの娘さんに寂聴さんも協力した稀有な関係作品を映画化
自分ではどうしようもない業と性と欲のエネルギーに翻弄される、ある意味幸せな人々のはなし

時代を感じさせる演出や環境に人物像など、前世代ならではの臭いには思いのほか戸惑った
多分、当時はぶっ飛んだ文壇の物書き達のぶっ飛んだ恋愛憎話だったのだと思うが「現実は小説より奇なり」
これは現実ベースのフィクション小説
現代においては更にぶっ飛んだ現実が存在する気も

妻曰く嘘をつくことでしか生きられなかった男は無意識の現実にとらわれ続ける
一見男は自由奔放に振る舞っているように見える
一見妻は甲斐甲斐しく尽くしているように見える
一見女は欲望のまま突き進んでいるように見える
本当にそうだろうか
人の胸中「真の想い」など本人でさえ気づかないものだ

人の世は社会のみならず家庭内にも力関係をもたらす
男に盾突くこともなく表面上感情的になるでもなく、彼の後始末までも引き受け淡々と日常をおくる妻
私には彼女がすべての決定権をもつように見えた
実体験からも昭和の家庭はこうして保たれてきた家が少なくないはずだ
それは娘さんたちが立派に成人されていることからもうかがえる

この国の結婚した女性には、大昔からある種の覚悟が求められてきた
勿論それを選択しない女性にも、更なる厳しい覚悟が必要とされてきた
時代と世間にあらがった不倫関係、夫婦関係、三角関係がもたらす覚悟(👹)は彼らをある幸せへと導く

鬼を手なずけるのは容易いことじゃない
さて現代令和の夫婦、不倫、親子など様々な関係性において一体どれほどの覚悟が存在するのか
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