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オッペンハイマーのchaiksのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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「それぞれの覚悟」

ゲイリーが素晴らしく
大統領の言葉が扉越しに力強く響く
それぞれの立場の“覚悟”を強烈に印象付ける
同時にプロメテウスの思慮のなさに
人間のどうしようもなさに
救いようのない闇をみる
エンタメとはいえこんな人物だったのかが正直な感想
キャストの豪華さに
セットや映像音声など様々なスタッフもまさに豪華
「昔ながらのフィルム映画とは雲泥の差の別物!」
鑑賞直後に言い放った彼女
環境の整った映画館で体験すべき最新映像音響

博士は聴聞会で問われ答え、自分の利を選ぶ
保身、正当化、狡猾
報復、放置、逃避、疑念
登場人物の誰もが自分が最も大事であり
そのことで他がどうなるかなど二の次だ
たとえそれで己が傷ついたとしても
それは自分のためのフリ、それが人間の一面でもある

妻は博士に何度も繰り返す
闘え!っと激しく厳しく叱咤する
そう、闘わなければならないのは他ならぬ自分自身
またも挑み続ける象徴、闘い続ける彼女ゆえの言葉
監督の声が脳内でこだまする
己と闘う覚悟があるのか?

大勢の観衆が歓喜に沸く姿
足踏みは暴爆音と化し全身に襲いかかり
彼らのあまりの“愚かさ”に胸がつまり
賞賛映像はにじみ嗚咽が止まらない
あの劫火のもとに22万
否それ以上の人々をも巻き込み
博士の足元に絡みつく
その後も長く続く言葉にできない深闇は
今現在あの観衆をも巻き込み渦巻き続けている悪夢
欲望に愛と想像力の欠如、人は愚なり

博士は罰を受け続けたのか
責苦のプロメテウスでありえたのか
罰を受け続けているのは我々ではないのか

ラミが素晴らしく
倫理象徴的かつ印象的なのが救い
いま世界の人々はこの作品をどうとらえるのか
わたしはこの世代を信じたい
被爆国、戦争を知らない世代が間もなく始まる
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