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いつかの君にもわかることのchaiksのレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
4.5
「特別なことじゃない」

保護が必要とされる幼子にこれほど愛情を注ぎ続けることができる大人がどれだけいるだろう?

子供時代無意識に信じていた「親」という存在は
決して全能でも愛情あふれた人生の指導者でもない
子供を授かれば物理的に「親」と言われる立場になるけれど、悲しいかな「親」と呼ばれれば「良親」ができる訳ではない…私も含めて

ジェームズ・ノートンとダニエル・ラモント
彼らはとても魅力的だ
役者の人選が作品を上質にする
是枝監督のようにオーディションを経て初出演のダニエルに向き合ったウベルト監督とジェームズ
その丁寧な映画作りのおかげか、彼らにはリアル以上にリアルな悲しいほど得難い「親子」の姿があった
お互い相手の存在を心にかけ労り思いやる日常は
「これだよね」と悲しいほど静かに繰り返し何度も訴えかけてくる
相手のために行う数々の行為や発言は
その都度厳しい眼差しを静かにこちらに向けてくる
「お前もこうされたことがあるだろう?」
「お前はどうだ? こうしてきたのか?」

彼らを取り巻く何気ない人々の姿はとても優しく
悪意を感じがちな人々さえにもその背景を想像させる力を感じた
作中で表現されるのは自分の根幹(根っこ)に何を備えているのかということ
全ては自分の心の中に存在するし
それは巡り巡って己へと戻ってくる
今の私に言えるのはそれだけだ

人生に起こること
それは決して特別なことじゃない
運命の歯車が狂う事はいつ誰の身の上にも起こりうる
大事なのはそれをどうとらえどう立ち向かうのか

この父親は幼い息子のためにすべてを捧げてきた
捧げ方は様々だが、大人になると自分よりも誰かを優先して思い続けるのは正直とてもとても難しい
けれど、それが少しでも叶ったとき、見たこともないご褒美を手に入れることができるのだろう
すべての人々の心に少しでも穏やかな日々をと願わずにはいられない
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