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帰れない山の小皿のレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
3.8
u-nextのポイントを使って鑑賞。
ドキュメンタリーな映画かと思っていたのですが、縁あって原作を手にして、読了後に鑑賞です。 
映画を単体で観たとして、たぶん起伏の乏しいストーリーにもう少し退屈していたかもしれません。
ただ、原作はとても読みやすく、作者、そして翻訳者の確かな仕事を感じさせる物語でした。
原作もストーリー的に起伏は乏しいのですが、映画では今ひとつ描かれきれなかった主人公ピエトロと父との葛藤や、ピエトロの孤独などしっかり描かれていて、決して湧き上がる感動といった派手なものはないのですが、じんわりと深く心に染みる物語でした。
映画は原作をとても忠実に再現しようと苦心されていたと思います。
30年に渡って描かれる二人の男たちの、言葉を介さない心の共鳴が描かれていて、二人の友情を、羨ましくもあり、また何故か誇らしくもありといった、不思議な感情を抱かされました。
二人を結びつけていたのはそれぞれの孤独の魂なのだと、観終わった後にそう感じました。
題名の不穏さから、ある程度の結末の行方を想像しながら読んだけれど、もしこの作品が原題の「八つの山」であったなら、こうした読み方はしなかっただろう。この小説を見事に表した『帰れない山』は、いい題名だと思うけれども、この一点に関して言えば、少し残念な思いもある。
もちろん、それを補って余りある日本語としての読みやすい文章に、端正な言葉選び等、素晴らしい訳であることは間違いないと思いました。
山登りを趣味にしている者として、僕なりの山の景色を思い浮かべながら読み進めましたが、映画で描かれているイタリアのモンテ•ローザの山々の風景は、やっぱり圧倒されるほどの美しさです。
去年はコロナの影響も引きずっていて思うように山に登れませんでしたが、今年は今からしっかり体力作りして、百名山10座目指して頑張りたいと思います❗
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