hiyo

プアン/友だちと呼ばせてのhiyoのネタバレレビュー・内容・結末

プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

オンライン試写会で鑑賞しました。

なんでわざわざNYから友だちを呼び寄せたんだろうという疑問が、タイを巡る旅を通してふたりの過去の関係性が紐解かれる間にすっきり解け、最初から全開なボスの享楽的な生活ぶりの理由も見えて別れの話だけど爽やかでした。
ボスは最初から絵に描いたようなチャラさですけど、余命宣告受けた友だちのためにわざわざNYからタイまで仕事1ヶ月休んで来てくれる人なんだよなあ、と思いながら観てたので、どんどん明らかになる盛り過ぎなくらいのキャラ設定が逆にしっくりきてよかったです。

原題のOne for the Roadが鑑賞後のイメージにピッタリでした。邦題もわかりやすいですけど。
お酒あまり飲まないのでカクテル全然わからないのですが、カクテルに載せられた意味までつくり込んであってそこの解像度上がればもっと楽しめたのかな、と思います。食事シーンの代わりに、カクテルやお酒飲むシーンがクローズアップされていたので。
あと、旅先として描かれるタイの風景の湿度や温度が画面を通して伝わって、その場に自分も行ってみたくなりました。

何者にもなれない夢追い人の男子コンビに対して、主にかつての交際相手として登場する女性たちは理想とは違っても何者かになっている(ならざるを得ない)という対比は意図的なのかな。そういうところもトークゲストの森直人さんが仰ってたように作品のボーイッシュさかも。

試写会から一夜経てしみじみ考えてしまうのは、ウードのボスへの執着と呼べる感情で、余命宣告によってそれを受け入れられたことがストーリーの軸になる彼の旅の始まりだったとも思う。
NYで出会った彼女たちは身代わりで、本当に欲しいものではなかった。深く付き合った相手だからお別れを告げたいという気持ちだけでなく、自分が本当に欲しかったものに気付いたからこそ、それまで彼女たちの思い出に取っておいたものを彼女たちの人生に返そうとしたのだと思う。
女性がたくさん登場するけれど、中心となるのは男性同士の関係性だというのがまた、ボーイッシュな印象なのだろうけど、その幼さと残酷さにウード自身が気付いているというのが、作品の苦味を和らげていそう。
そう思うと、結末まで覚悟してボスを誘ったウードを、もう一回最初から見てみたくなりました。
hiyo

hiyo