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揺れるときのデイのレビュー・感想・評価

揺れるとき(2021年製作の映画)
4.6
8月になってしまいました。

とても好きな作品でした。

サミュエル・セイス監督の自伝的映画であるとの事です。


ドイツ国境近くの小さな町

冒頭で男に紙煙草の紙を巻いてあげて、その男にハグをして別れを告げる10歳のジョニー。

ママがその男と別れたから引っ越す事に。
それは、トラックに荷物を積むとかでは無く、ママと兄、ジョニーと幼い妹、そしてハスキー犬を連れて、荷物をガラガラと運びながらの引っ越し。

引っ越し先は低所得者向け団地。

ジョニーは、魚が入ったビニール袋を2つ持っていて、魚を水槽に放つシーン。

これは、窮屈なビニール袋にいる魚がジョニー自身と例えているのかな?
考え過ぎ?

もう、冒頭のシーンで心持ってゆかれました。

ジョニーは3兄弟の真ん中
上には16〜17歳ぐらいの兄がいて、既に半グレ状態。
そして幼い妹。
多分、父親は全員違う。

ママは感情的で、男にだらし無くて家に連れ込んだり平気でするし
ジョニーに対して暴力を奮ったりもする。

幼い妹はいつもジョニーが面倒を見ている。

9月の新学期…
リヨンから来たアダムスキー先生が担任に就く事になり…。
(ジョニーも引っ越しと共に転校した?)


ジョニー役のアリオシャ・ライナールくんの演技が秀逸でした!!
セリフが無い時の心の動き…本当に"揺れるとき"の感情とか、繊細な部分を見事に演じていました。

家庭環境からして、大人にならざるを得なかったジョニーだけれど、
思春期が3年ぐらい早く来てしまったと言うか…。

もう、やってる事が策士だし。
でも、まだ10歳なんだなー。と思うところもあり…
何だか涙。

ジョニーの心が絶望感でいっぱいになった時、
余り感情を見せないジョニーが初めてママにキレるシーン。

コカコーラの容器に入れた不味い"エセコーラ"
「自分には酒に金を使うクセに、まともなコーラも飲ませて貰えないのか!!もう、こんな生活は懲り懲りなんだ!!」
と…。

ママは雑貨店のバイトで働いて、酒と煙草と男と
そして貧しい生活から抜け切れない。

ずっとこんなふうに生きて行くつもり?
僕は嫌だよ!!
と…

あー!!この物語の"焦点"はここでは無いのに…泣いてしまったなー。

まだ10歳なのもあって、自分を"理解してくれる大人"が誰も居ない絶望感よ…。

静かに静かに物語は進んでいき、そして沸々とジョニーの中で溜めていた感情が剥き出しになる時がついに来たか!!と。


パケ写は
団地の屋上でジョニーが想いにふけるシーン。

この画もまた美しい。


Memo:
ラストシーンでジョニーが部屋で踊りくるい、ラストクレジットまで流れる一曲
Deep Purple - Child In Time
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